Misto: Liquid Rituals

今回訪れたのは、ローマ中心部から地下鉄B線でアクセスできる住宅街、Quartiere Africano(クァルティエーレ・アフリカーノ)。
その名から「アフリカ系住民が多い街」と思われがちですが、実はそうではありません。1930年代の開発時に、当時のイタリア領アフリカに由来する通り名が付けられたことから、この名前で呼ばれるようになりました。
緑豊かで落ち着いた雰囲気が魅力の人気住宅街で、地元のファミリー層や学生、若い社会人を中心にさまざまな国籍の人々が暮らし、おしゃれなカフェやレストランが点在しています。
観光客はそれほど多くなく、ローマの日常を感じられるエリアです。
そんな街角に佇むのが、ヴィンテージ感あふれるロフト空間が印象的なカクテルバーMisto。店内に足を踏み入れると、心地よい音楽、ゆったりとした会話、そして居心地の良いバーカウンターが、気取らない洗練された雰囲気を醸し出しています。

体験するカクテル
Mistoがこの夏発表した新しいカクテルメニューのタイトルは、Liquid Rituals (液体の儀式)。
メニューにはこんな言葉が添えられています。
「飲むという行為から、いつの間にか失われてしまった所作やリズム、意識を取り戻したい。すべてのカクテルは、ただ飲むものではなく、体験するものとしてデザインされている。」
近年は味だけではなく体験をデザインするバーが世界的に増えていますが、Mistoではその考えを儀式というコンセプトに落とし込んでいます。
8種類あるシグネチャーカクテルには、香りを変える、願いを書く、飲む順番を選ぶ、時間の経過を待つ、といった具合にそれぞれ異なる儀式があります。
最後の仕上げをするのはバーテンダーではなく、グラスを手にしたゲスト自身。
一杯のカクテルが、参加型の体験へと変わります。

J’Adore
香りの力を最大限に活かしたカクテル。
まずはそのまま香りと味わいを楽しみ、続いて付属のエッセンスを吹きかけてから、もう一度味わいます。同じ液体でありながら、香りが変わるだけで印象は驚くほど変化。まるで別の飲み物を飲んでいるかのような感覚を味わえます。
材料
Beefeater Gin, licorice, coconut water, vanilla, lemon, fig leaf soda, Three Cents
儀式
香りを嗅ぎ一口飲み、少し間を置いてからエッセンスをスプレーし、もう一度味わってください。

Borealis
夜空に舞うオーロラをイメージしたカクテル。
専用の演出を眺めながら味わうことで、視覚と味覚が重なり合い、幻想的な時間が生まれます。
材料
Wyborowa Vodka, Sabatini 0.0, mountain pine, sage & lemon, fake lime, sugar, Three Cents Aegean Tonic
儀式
演出を眺めながらゆっくり味わう。

Make a Wish
日本の達磨から着想を得たカクテル。
小さな達磨に片目を描き、裏に願い事を書いて持ち帰ります。そして願いが叶ったら再びMistoを訪れ、もう片方の目を描いて完成。カクテルを飲み終えた後も体験が続く、ストーリー性のある一杯です。
材料
ROKU Gin, yuzu, cherry blossom, blackberry
儀式
願い事を書いてだるまを持ち帰り、願いが叶った時に戻ってきて完成させましょう。

Spark
メスカルをベースにした刺激的なカクテル。
まずは、チリとライム、塩をブレンドしたメキシコのシーズニング「Tajín」がまぶされたグラスの縁を味わい、その後カクテルを飲みます。しばらくするとエレクトリック・フラワーの作用によって味覚が変化し、同じカクテルなのにまったく異なる印象へと変わっていきます。
材料
Mezcal, Santoni Amaro, Strega, orange, agave, Tajín, Electric Flower
儀式
時間を置いて、もう一度味わう。
*エレクトリック・フラワーは、口の中にピリピリとした刺激や軽いしびれを与え、一時的に味覚の感じ方を変化させる食用花。

Dark / Light
北欧の「光と影」をテーマにした二杯一組のカクテル。
深く包み込むようなDarkと、花の香りが広がるLight。どちらから飲むか、交互に飲むか、それとも同時に楽しむかは自由です。順番によって印象が変わり、自分だけの味わい方を見つけられます。
Dark
Four Roses Straight Bourbon Whiskey, Fusetti Cacao Bitter, Maraschino, Cherry, Carpano Classico Vermouth
Light
Sabino Distillati Gin Casa Mia, Violetta, Lillet Blanc, Fino Sherry
儀式
順番に、または同時に。

ネグローニの旅
Mistoではネグローニにもユニークなアプローチを取り入れています。
Negroni Codexでは、複数のネグローニを少量ずつ飲み比べながら、その違いを楽しむテイスティングコースを用意。一杯のクラシックカクテルが持つ幅広い表情を体験できます。
R(evolutionary) Negroniは時間とともに姿を変える一杯。最初はドライマティーニのような軽やかな味わいですが、ノンアルコールのビターとベルモットを閉じ込めた氷が溶けるにつれ、ゆっくりとネグローニへ変化していきます。
スペシャルティコーヒーを使用したRoasted Negroniや、麦焼酎を取り入れたRonin Negroniなど、クラシックを現代的に再解釈したラインナップが充実しています。


カクテルを引き立てる料理
フードメニューも充実しています。
職人技が光るシャルキュトリーボードや地中海風フムス、ハモン・セラーノのクロケッタ、プルドポークやチキンのタコスなどシェアしやすい料理が中心。どれもカクテルの味わいを引き立て、アペリティーボの時間をゆっくり楽しめます。
デザートには、ラム酒とミントを効かせた「モヒート・ババ」もおすすめです。



クァルティエーレ・アフリカーノのような時間そのものを楽しむ人たちが暮らす街で、飲むという行為をもう一度見つめ直す体験。
ローマには世界的に有名なバーが数多くありますが、ほんの少し中心部を離れるだけで、その街の日常とともに育まれた、新しいバーカルチャーに出会うことができます。
次にローマを訪れるなら、少しだけ寄り道をしてこの住宅街まで足を延ばしてみてください。観光地では出会えない、もうひとつのローマが待っています。
Misto




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