AllpossibledaiquirisにNeissonが加わる

ラムが変わればダイキリはどこまで変わるのか?
July 14, 2026
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Spirits
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Megumi Ueda

クラシックカクテルのなかでも、ダイキリほどベーススピリッツの個性がストレートに現れるレシピは珍しい。

ラム、ライムジュース、シュガーシロップ。材料はわずか3つ。シンプルだからこそ、ラムが変われば、香りの立ち方も、口当たりも、余韻も大きく変化する。ライムや糖分はラムを覆い隠すのではなく、その個性を際立たせる存在だ。

この「ダイキリはラムを表現するカクテルである」という考え方を、そのままボトルに落とし込んだプロジェクトが、イタリアのAllpossibledaiquirisである。

同ブランドに、この春、新たなラインアップ「#espritdaiquiri」が加わった。ベースとなるのは、マルティニークを代表するアグリコールラムの生産者、Distillerie Neissonの「L’Esprit Bio」だ。

RTDでありながら「ラムを変える」ことをテーマにしたシリーズ

RTD市場では、均質な品質や飲みやすさが重視されることが多い。一方、Allpossibledaiquirisが掲げるコンセプトは、その対極にある。

レシピは変えない。変えるのはラムだけ。

シリーズを通して使用するのは、オーガニックのシチリア産IGPライムジュース、オーガニックのサトウキビシロップ、水、そしてラムのみ。フレーバーや香料を加えることなく、ベーススピリッツの違いをダイキリというフォーマットで比較できるよう設計されている。

もちろん、実際にはラムを入れ替えるだけでは成立しない。ラムごとに香味の構成は異なるため、加水率や糖度、最終的なアルコール度数、さらには液体の質感まで、それぞれに合わせて調整されている。それでも「主役はラム」という思想は一貫している。

このシリーズは、ダイキリを再現するRTDというより、異なるラムを比較試飲するためのプラットフォームと捉えたほうが、その本質に近いだろう。

世界のサトウキビスピリッツをダイキリで読み解く

これまでのラインアップを見ても、その方向性は明確だ。

ハイチのClairin Communal、ジャマイカ・Hampden EstateのRum Fire、グレナダのRivers Rum、そしてメキシコ・オアハカのParanubes。

いずれも大量生産のラムではなく、自然発酵や伝統的な蒸留設備を用い、それぞれの土地の風土を反映したサトウキビスピリッツである。

共通項は、「テロワールが見えるラム」であること。

ワインであれば産地や畑、生産者を比較するように、このシリーズではダイキリという共通フォーマットを通して、それぞれのラムの個性を比較することができる。

第5のテロワールとして加わったNeisson

今回採用されたNeisson「L’Esprit Bio」は、マルティニーク北部ル・カルベにある家族経営のDistillerie Neissonが造るオーガニック・アグリコールラムである。

原料となるサトウキビは蒸留所周辺で栽培された有機栽培のもののみを使用。銅製Savalle式連続蒸留器で蒸留し、加水もろ過も行わず、蒸留時の度数そのままでボトリングされる。

一般的なモラセスラムとは異なり、フレッシュケーンジュース由来の植物的な香りや青草、白い花、シトラス、そしてミネラル感が際立つスタイルで知られる一本だ。

このキャラクターを、ライムと糖だけを加えたダイキリとしてどのように表現するのか。それは単なる新商品というより、シリーズ全体に新たな比較対象が加わった、と捉えるべきだろう。

RTDでありながら、設計思想はバークオリティ

興味深いのは、その製造工程にも表れている。

Allpossibledaiquirisでは、各ラムを官能評価だけでなく化学的にも分析し、エステル類や高級アルコールなどのコンジェナーを確認。その後、完成したボトルについても再度分析を行い、香味成分が適切に保持されているかを検証しているという。

さらに、最終的な提供アルコール度数は約12.5%に統一されているが、加水量はすべて同じではない。ラムごとの個性に合わせて設計されており、「同じレシピを大量生産する」のではなく、「それぞれのラムに最適なダイキリを設計する」というアプローチが採られている。

700mlボトルにはクラシックスタイルのダイキリ約7杯分を収録。4℃まで冷やせば、そのまま提供できる。バー営業においても品質の均一化やオペレーションの効率化という視点から興味深い提案といえる。

「比較する」という楽しみ

ダイキリは、セビーチェやスモークサーモン、ライムを効かせたエビ料理、アボカドを使ったフィンガーフードとの相性が良い。裏巻きやスパイシーツナロールといった軽やかな寿司との組み合わせも面白い。

しかし、このシリーズの楽しみ方としてまず提案したいのは、ペアリング以上に「比較試飲」である。

NeissonとHampden、ClairinとParanubes、RiversとNeisson。

同じダイキリというレシピで飲み比べることで、発酵や蒸留、原料、土地がもたらす違いが、想像以上にはっきりと浮かび上がる。

バーのカウンターでベーススピリッツを変えてクラシックカクテルを作り比べることは珍しくない。しかし、それを品質のばらつきなく体験できるという点で、このシリーズはRTDというカテゴリーを超えた実験的なプロジェクトともいえる。

Neissonの参加によって、その比較はさらに奥行きを増した。

ダイキリというクラシックを通してラムを読み解く。Allpossibledaiquirisは、その楽しみ方をあらためて提示している。

Velier
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