Pallini: 次に育てる市場

Palliniがリモンゼロで示したノンアルコールへの本気度
昨年、創業150周年を迎えたPallini。イタリア・ローマを拠点に、現在では世界80カ国へ製品を輸出する同社は、リモンチェッロにおいて世界的な存在感を持つブランドとして知られている。
Pallini Limoncelloは、販売量と金額の両面で世界トップクラスの実績を誇り、同社の売上の大きな柱となっている。2025年の売上高は約2,760万ユーロに達し、その64%をリモンチェッロが占めるという。
しかし、いまPalliniの中で最も高い成長率を示しているのは、伝統的なリモンチェッロそのものではない。初のノンアルコール・リモンチェッロとして展開される「Limonzero (リモンゼロ)」だ。
2024年から2025年にかけて、リモンゼロは前年比95%の成長を記録した。さらに今年も、アメリカ市場からの強い需要に牽引され、50%以上の成長が続いているという。
150年の歴史を持つ蒸留所が、次の成長市場として見ているもの。それがノンアルコールであるという事実は、現在のバー業界にとってひとつの象徴的な出来事だ。



ローマで開催されたPalliniのミクソロジーイベントは、その方向性を明確に示す場となった。
会場となったのは、Anantara Palazzo Naiadi Rome Hotelの屋上にある「SEEN by Olivier」。ローマの街を見渡すテラスで披露されたのは、リモンゼロを使った新しいノンアルコールカクテルだった。
イベントを主導したのは、Pallini創業家5代目であり、社長兼CEOを務めるミカエラ・パリーニ(Micaela Pallini)。彼女は、ノンアルコール市場の成長についてこう語っている。
「2024年から2025年にかけて、ノンアルコールスピリッツ市場は65%成長するでしょう。その背景には、大手ブランドによるノンアルコール製品への投資があります」
Palliniにとってリモンゼロは、単なる流行への対応ではない。同社の既存の強みであるレモンリキュールの世界観を、アルコールを前提としない市場へ拡張するための商品である。
その意味で、リモンゼロは「お酒を飲まない人のための代替品」ではなく、Palliniが持つアマルフィのレモン、リモンチェッロの伝統、アペリティーボの文化を、現代の消費者に合わせて再構築したものだと言える。

リモンゼロに使われているのは、アマルフィ海岸産のSfusato IGPレモン。香料やフレーバーを添加せず、レモン本来の香りを生かした味わいに、天然のジンジャーが繊細なアクセントを加えている。
香りは明るく、味わいは軽やか。リモンチェッロのような濃厚さを想像すると、むしろそのバランスの取り方に驚かされる。甘味と酸味、ジンジャーのスパイスが、ノンアルコールでありながらカクテルベースとしての余白を作っている。
今回のイベントで重要だったのは、Palliniがリモンゼロを完成されたドリンクとしてだけ提示しなかったことだ。彼らが提示したのは、ひとつの商品ではなく、バーでの使い方だ。

メッシーナのZen Eatで活躍するバーテンダー、ミケーレ・サレルノが提案したのは、リモンゼロを軸にした複数のカクテルだった。
ひとつは、ノンアルコール・スプリッツとして組み立てた「Limonzero Spritz」。リモンゼロに、アルコール度数0%のスパークリング、ソーダを合わせ、レモンを添える。イタリアのアペリティーボに欠かせないスプリッツの文脈を保ちながら、アルコールを使わずに軽やかな飲み口へと仕上げている。
「Zen Eat」は、リモンゼロにエルダーフラワーシロップを合わせ、ジンジャービールで満たす一杯。リモンゼロに含まれるジンジャーのニュアンスを、ジンジャービールでさらに引き出す構成だ。レモンの明るさと花の香り、ジンジャーの刺激が重なり、食前酒としてだけでなく、日中のテラスやビーチサイドにも合う仕上がりになっている。
もうひとつの「Fluo」は、リモンゼロにシンプルシロップ10mlを加え、カルダモン風味のソーダで仕上げる。ここではレモンの爽やかさに、カルダモンの清涼感とスパイスが重なる。ノンアルコールカクテルにありがちな単調さを避け、香りの層で飲みごたえを作る提案だった。
さらに、リモンゼロにトニックウォーターを合わせる「Limonzero Tonic」も紹介された。最もシンプルな構成ながら、バーの現場では実用性が高い。オペレーションが簡単で、食前酒として提供しやすく、ゲストにも説明しやすい。こうした一杯は、ノンアルコールをメニューに組み込むうえで非常に重要な存在になる。


ノンアルコールカテゴリーが広がる一方で、現場では「甘い」「単調」「食中に合わせづらい」「アルコールカクテルに比べて構成が弱い」といった課題も残っている。
リモンゼロは、その課題に対して、レモンの酸、ジンジャーのスパイス、アマルフィという土地のストーリーを持ち込む。つまり、カクテルを組み立てるための素材として成立しているのだ。
Palliniがリモンゼロに取り組む姿勢には、老舗ブランドならではの説得力がある。ただしそれは、単に長い歴史を持つからではない。Palliniはこれまでも、時代ごとに新しい市場を見つけ、自社のブランドを広げてきた会社だからだ。
創業は1875年。イタリア中部のAntrodocoで始まった小さな蒸留所は、1922年にローマへ拠点を移し、Mistràを首都の代表的なリキュールへと育てた。その後、アメリカ市場への輸出を始め、Sambuca RomanaやPallini Limoncelloを通じて国際市場で存在感を高めていく。
特にPallini Limoncelloは、同社を世界的なブランドへ押し上げた主力商品だ。現在では世界で最も売れているリモンチェッロとして知られ、Palliniの売上の大きな柱となっている。


150年企業という言葉には、伝統を守り続けるというイメージがある。しかしPalliniの歩みを振り返ると、その歴史は変化を受け入れてきた歴史でもある。ローマへの拠点移転、アメリカ市場への進出、そしてリモンチェッロの世界展開。その時々の市場を読み、新たな成長機会をつかみながらブランドを育ててきた。
Palliniが次に育てようとしているのは、一本のノンアルコール商品ではない。
アルコールの有無を超えて、誰もが一緒に楽しめるバーの未来そのものなのかもしれない。

ミケーレ・サレルノのレシピ
Zen Eat
4cl Pallini Limonzero
2cl Elderflower syrup
Top with ginger beer
ハイボールグラスにパリーニ・リモンゼロ4clとエルダーフラワーシロップ2clを注ぎます。かき混ぜて、ジンジャービールを少量かけてください。
Limonzero Spritzball
50ml Pallini Limonzero
90ml Bollicine 0.0%
30ml soda
氷を入れたグラスに、パリーニ・リモンゼロ50ml、ボリチーネ(アルコール度数0%)90ml、ソーダ水30mlを注ぎます。かき混ぜて、レモンのくし切りを添えてください。
Fluo
4cl Pallini Limonzero
1cl simple syrup
Cardamom-flavoured soda
ハイボールグラスにパリーニ・リモンゼロ4clとシンプルシロップ1clを注ぎます。かき混ぜて、カルダモン風味のソーダ水を添えてお召し上がりください。
Pallini社の歴史
1875年
Nicola Palliniがイタリア中部・アントロドーコでPallini社を創業。
1922年
息子のVirgilio Palliniがローマへ蒸留所を移転し、「ミストラ」を首都ローマで代表的なリキュールへと育てる。
1962年
第三世代が現在の工場へ移転し、アメリカへの輸出を開始。
1985年
Virgilio Pallini Jr.が経営を引き継ぎ、Sambuca Romanaをアメリカ市場のトップブランドへ成長させる。
テレビCM「Pallini è un gran Mistrà」も大ヒット。
2001年
5代目となるMicaela Palliniが入社し、Pallini Limoncelloを世界ブランドへ育てる体制を整える。
2024年
世界70か国へ輸出。
Pallini Limoncelloは販売数量・売上ともに世界No.1のリモンチェッロとなる。
2025年
創業150周年を迎える。
Pallini






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