HEY Güey: Chapter Romaの夏季限定バー

日差しが照りつけるローマの夏。美食を満喫した旅の後半、不意に欲しくなるものがある。
ライムの鋭い酸味、チリの軽い刺激、そして氷をたっぷり使った冷たいテキーラカクテルだ。
カルボナーラもアマトリチャーナも、もちろん素晴らしい。けれど数日間ローマを歩き回った身体は、どこか南国の空気や、フレッシュなハーブ、アボカドやライムの香りを求め始める。
そんな夜に向かいたいのが、Chapter Romaの最上階に夏だけ現れる「HEY Güey」。
ローマの屋根とドームを見渡すルーフトップで、メキシコ料理とアガベスピリッツを楽しめる、春夏限定のバーである。
しかし、ここを単なる「景色のいいメキシカンバー」と思ってしまうのは間違いである。
グランドフロアにも完成度の高いバーを構えるChapter Romaにとって、HEY Güeyは夏だけ屋上へ移るもう一つのバーなのだ。
陽気でカジュアルなテラスの奥には、ホテルバーとしての技術とホスピタリティがある。



夏だけ開くもう一つのバー
Chapter Romaは、ローマ中心部、ユダヤ人街とリオネ・レゴラの境界に建つブティックホテル。
19世紀の建物を南アフリカ出身のデザイナー、トリスタン・デュ・プレシスがリデザインし、むき出しのレンガやアーチ、真鍮やスチールを組み合わせた空間は、歴史と現代性、そしてストリートカルチャーが自然に共存している。
Chapter Romaには、一年を通して営業するロビーのバーHey Babyがある。昼はコーヒーやフレッシュジュース、夕方からはシグネチャーカクテルを楽しめるこのバーは、ホテルのバーカルチャーを象徴する存在。ローカルと旅行者が自然に交わるコミューナルな空間であり、クラシックを現代的に再構築するミクソロジーが高く評価されている。
HEY Güeyは、そのHey Babyのスピリットを、夏の間だけ屋上へと広げた”もう一つのバー”なのである。
カラフルなファブリックやサボテンがさりげなく配されたテラスは、ローマの街並みに溶け込みながらも、どこかメキシコのリゾートを思わせる穏やかな空気をまとっている。
チームが手掛けるカクテルは、景色の良さに頼る必要のない、国際水準のカクテルだ。味わいの設計、温度、希釈、香りの立ち上がりまで緻密でありながら、飲み手にはその技術を意識させない軽やかさがある。
しかもメニューは毎年アップデートされる。
HEY Güeyは単なる夏季営業ではなく、毎年新しいテーマで立ち上がる、季節限定のバーなのである。


景色だけでは終わらない
ルーフトップバーは、景色が主役になりがちだが、HEY Güeyは違う。
ドリンクは技術、バランス、独創性のいずれも高い水準にあり、景色よりカクテルを目当てに訪れるゲストが多い。
Humo y Fuego
メスカルをベースに、アペロール、ジンジャーシロップ、ライムを合わせた一杯で、スモーキーさの中に爽やかな酸味とほのかな苦味が重なる。夕暮れのまだ暑さが残る時間帯にぴったりだ。
Corallo
テキーラとBombay Sapphire Gin、イタリアンアマーロ、トニックウォーターを組み合わせたHEY Güeyらしいシグネチャー。
メキシコを象徴するテキーラと、イタリアらしいアマーロが一つのグラスで自然につながり、この街ならではのアペリティーボを表現している。
Flor de Azotea
42 Below VodkaにSt-Germain、ミント、ライム、プロセッコを合わせた軽快なロングドリンク。
“Azotea(屋上)“という名の通り、ローマの街がオレンジ色に染まる時間帯に最も似合う一杯だ。
Mezcal Negroni
メスカルネグローニは、もはやクラシックツイストの定番になったが、HEY Güeyにきたらどうしても飲みたくなる一杯の一つだ。
フローズンマルガリータやミチェラーダのような夏らしいドリンクも揃い、暑い夜の気分に合わせて選べる懐の深さも魅力だ。


ワカモレと香ばしく揚げたトルティーヤチップス
料理も、カクテルの添え物では終わらない。
中でもぜひ注文してほしいのが、自家製ワカモレ。
濃厚なアボカドに、ライムの酸味と塩味のバランスが見事で、シンプルだからこそ素材の良さと仕上げの丁寧さが伝わってくる。
これまでローマで食べたワカモレの中でも、特に印象に残る一皿だった。
そこへフィッシュタコスやポークタコス、セビーチェを合わせれば、ライムやコリアンダー、チリの香りがカクテルと自然につながっていく。
カクテルに合わせるスナックのおすすめを聞いて組み合わせるのも楽しい。


HEY Güeyで印象的なのは、料理やカクテルだけではない。
トップホテルならではのホスピタリティが、この場所全体を心地よくしている。
スタッフはフレンドリーで、気取らず、それでいてサービスは的確。
ローマ観光を一日中楽しみ、少し疲れた身体でも自然とリラックスできる。
HEY Güeyは、バーを大切にするホテルが、夏のために屋上へ開く、季節限定のもう一つの顔である。
ローマの屋根が夕日に染まり始める頃、グラスには冷たいテキーラカクテル。テーブルには、自家製ワカモレとタコス。まだ夏は始まったばかり。
旅の途中で、「また今夜もあそこへ行こう」と思わせてくれるバーは、そう多くはない。HEY Güeyは、その数少ない一軒である。
Chapter Roma



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