ニッカウイスキーの伝統

ニッカウイスキーの創業者、竹鶴政孝は、日本で初めてウイスキーを蒸留した人物でもあります。彼の偉業は、日の出ずる国から届く一杯一杯のウイスキーの中に息づいています。1世紀以上を経た今も、ニッカは洗練されたバランスと卓越した品質で知られる日本を代表するウイスキーメーカーの一つであり、ウイスキー業界で世界的な評価を得ています。この特別なテイスティングでは、ブレンデッドウイスキーからプレミアムシングルモルトまで、ニッカの様々なウイスキーを試飲しました。今回のマスタークラスでは、ヴェリエ社のウイスキー専門家であるサミュエル・チェザーナ氏による、日本のウイスキーの歴史、製造方法、そして文化的意義についての解説がありました。
テイスティングラインナップ:
- ニッカ フロム・ザ・バレル 51.2°
- ニッカ カフェ グレーン 45°
- 宮城峡シングルモルト ノーエイジ 45°
- 余市シングルモルト ノーエイジ 45°
- 余市10年シングルモルト 45°


竹鶴政孝 - 日本のウイスキーの父
広島での幼少期 (1894)
1894年、広島県竹原市に生まれた竹鶴政孝は、酒造業を営む家に育ちました。酒造りの技術を学ぶ中で、ウイスキーに魅了されていきました。
スコットランド留学 (1918)
1918年、竹鶴は摂津酒造(現・宝酒造)に入社し、ウイスキー製造の研究を任されました。スコットランドでウイスキー造りを学んだ最初の日本人となり、
- グラスゴー大学で化学を学ぶ
- ロングモーン蒸留所とヘーゼルバーン蒸留所で研修を受ける
- スコットランド人女性、リタ・コーワンと結婚する
スコットランドのウイスキーの伝統に感銘を受けた竹鶴は、故郷で本物のウイスキーを造ることを決意して日本に戻りました。
日本初のウイスキー (1923年 - サントリー山崎蒸留所)
帰国後、摂津酒造はウイスキー製造の計画を断念しました。その後、竹鶴は寿屋(現サントリー)に入社し、創業者の鳥井信治郎と共に日本初のウイスキー蒸留所「山崎」の設立に尽力しました。1929年には、日本初の本格ウイスキー「サントリーホワイトラベル」(後の角瓶)を発売しました。しかし、竹鶴はスコットランドの自然環境により近い場所でウイスキーを造りたいと考え、独立を決意しました。

ニッカウイスキーの誕生と成長
ニッカウイスキー創業(1934年)
1934年、竹鶴は北海道余市町に大日本果汁株式会社を設立しました。スコットランドに似た冷涼な気候とピート資源に恵まれた土地を選んだのです。ウイスキーの熟成期間中、事業を持続させるため、当初はリンゴジュースを販売していました。「ニッカ」という社名は、大日本果汁の略称に由来しています
第二次世界大戦中の課題(1940年代)
- 1940年、ニッカは最初のウイスキーを発売しました。
- 第二次世界大戦によりウイスキーの生産は困難を極めました。
- 同社は軍需品の生産に軸足を移し、民間向けのウイスキー販売は制限されました。
戦後の発展(1950年代~1960年代)
戦後、日本のウイスキー需要が高まるにつれ、ニッカは繁栄しました。 1952年、同社は正式にニッカウヰスキー蒸留株式会社となりました。
宮城峡蒸溜所 (1969年)
ニッカのウイスキーのスタイルを多様化するため、竹鶴は1969年、宮城県仙台市に宮城峡蒸溜所を設立しました。
- 余市蒸溜所: 力強く、スモーキーでピーティーなウイスキーを生産しています。
- 宮城峡蒸溜所: 柔らかく、フルーティーで繊細なウイスキーを造り出しています。
この二重蒸溜所システムにより、ニッカはブレンデッドウイスキーとシングルモルトウイスキーのラインアップを拡大することができました。
晩年の竹鶴正孝 (1979年)
竹鶴政孝は1979年に亡くなりましたが、彼のビジョンはニッカのウイスキー造りの哲学を形作り続けています。今日、ニッカは世界的に認知されたウイスキーブランドであり、余市10年シングルカスクがワールドベストウイスキーに選ばれた(2001年)など、数々の国際的な賞を受賞しています。

ニッカ フロム ザ バレル
樽特有の力強さで知られる力強いブレンデッドウイスキー。
- アルコール度数: 51.2%
- タイプ: ブレンデッドウイスキー (ポットスチルとコラムスチル)
- 熟成: ミックスカスク
- 熟成プロファイル: リッチでスパイシー
- テイスティングノート: キャラメルとバニラの甘さを伴うスパイシーな香り。その後に長く続くウッディな余韻が続きます。

ニッカ カフェグレーン
伝統的なコーヒースチルで蒸留されたシングルグレーンウイスキー。独特の甘みが特徴です。
- アルコール度数:45%
- タイプ:シングルグレーンウイスキー(ポットスチル&コラムスチル)
- 熟成:ミックスカスク熟成
- 産地:宮城峡蒸溜所
- 特徴:バニラとトロピカルフルーツ
- テイスティングノート:滑らかで甘い味わい。バニラ、キャラメル、エキゾチックフルーツのニュアンスがほのかに感じられます。

宮城峡シングルモルト
宮城峡の特徴である柔らかく繊細なスタイルを表現した、フルーツ風味豊かなウイスキーです。
- アルコール度数:45%
- タイプ:シングルモルト(ポットスチル)
- 熟成:バーボン樽とシェリー樽
- 原産地:宮城峡蒸留所
- プロファイル:フルーティーでスムーズ
- テイスティングノート:リンゴと洋ナシのアロマ、マイルドなスパイス、優しい甘さ

余市シングルモルト
伝統的なピート香が特徴の、力強くスモーキーなシングルモルト
- アルコール度数: 45%
- タイプ: シングルモルト
- プロファイル: ピート香とスモーキー香
- テイスティングノート: 豊かなピート香、オークのスモーク香、ほのかなモルトの甘みが感じられる、力強いボディ

余市10年 シングルモルト
10年以上熟成されたこのウイスキーは、ピート香と奥深い複雑さの絶妙なバランスを実現しています。
- アルコール度数: 45%
- タイプ: シングルモルト
- プロファイル: リッチでバランスのとれた味わい
- テイスティングノート: ピート香にドライフルーツやキャラメルのニュアンスが感じられ、なめらかで長く続く余韻が残ります




ニッカウイスキーの揺るぎない伝統
竹鶴政孝氏の先駆的な努力は、今日私たちが知るジャパニーズウイスキーの礎を築きました。スコットランドの伝統的な製法を日本に持ち込み、それを日本の風土に適応させることで、彼は今もなお繁栄を続けるウイスキー文化の創造に貢献しました。余市と宮城峡に蒸溜所を持つニッカは、豊かな歴史を尊重しながら革新を続けています。
今日、ニッカウイスキーは、竹鶴氏が思い描いた職人技と献身の精神を体現する、世界的に高く評価されるブランドとなっています。ストレート、オンザロック、カクテルなど、どんなスタイルで楽しむにしても、一口ごとに日本のウイスキーのパイオニアの伝統が息づいています。
サミュエル・チェザーナ
https://www.instagram.com/samuelcesana/
ニッカウイスキーEU
https://www.instagram.com/nikkawhiskyeu/
ヴェリエ