ポッドキャスト Slaps & Punch

成功、失敗、お金、そして人生
June 9, 2026
-
Industry
-
8
MIN
Corrado Tiberio

バーテンダーは、アイデンティティ、野心、失敗、そして成功について、私たちに何を教えてくれるのだろうか?

イタリアのホスピタリティ業界から近年登場した最も注目すべき新進気鋭のポッドキャストの一つ、Slaps & Punchは、まさにこうした問いを探求している。

このYouTubeポッドキャストは、バーとカクテルの世界を基盤としているが、その内容はそれだけにとどまらない。イタリアを代表するバーテンダー、バーオーナー、教育者、そしてホスピタリティ業界のプロフェッショナルたちへの長時間のインタビューを通して、バー業界をレンズとして、より幅広い人間ドラマやキャリアパスを考察する。

その結果、単にドリンクの話にとどまらず、リーダーシップ、一貫性、個人の価値観、お金、キャリア選択、そして成功の裏にある現実といったテーマにまで踏み込んだ、思慮深い対話の数々が生まれる。

このプロジェクトの理念をより深く理解するため、創設者のジョルジオ・モリノとマッテオ・ギットーニにインタビューを行い、彼らのキャリア、海外での経験、Slaps & Punchの設立経緯、そしてホスピタリティ業界の未来像について話を聞いた。

出会いとバー業界への入り口

インタビュアー

まず、お二人はどのように知り合ったんですか?

GIORGIO

知り合ったのは10年くらい前ですね。

正確にはJerry Thomasのコースなんですが、実はその少し前から顔見知りではありました。

マテオは当時Baccanoで働いていて、僕はバーテンディング専門のメディアで記事を書いていました。イベントがあるとよくBaccanoに飲みに行っていたんです。

当時はMario Farullaがマネージャーとして入ったばかりで、お店もかなり盛り上がっていました。

その後、Jerry Thomasのコースで改めて知り合って、そのあとオーストラリアで一緒に働くことになりました。

イタリアに戻ってきてからも、マテオと同じバーで働くことはなかったんですが、バーに関連するいろいろなプロジェクトで一緒に仕事をするようになりました。

MATTEO

そこから友情が深まっていきました。気が付けばすごく仲が良くなっていて、今もいろいろなプロジェクトを一緒にやっています。

インタビュアー

お二人がバー業界に入ったきっかけを教えてください。

GIORGIO

僕の場合は少し変わっていて、もともとはジャーナリストを目指していました。

記者として研修を受けながら、BlueBlazerで記事を書くようになったんです。

バーについて取材しながら記事を書いているうちに、逆にバーそのものに魅了されてしまいました。

普通はバーテンダーになってから記事を書くと思うんですが、僕の場合はその逆でした。

バーに惹かれてバーテンダーのコースを受講し、その後は執筆とバーの仕事を並行して続けるようになりました。

しばらくはその二本立てでやっていましたね。

今は腰の問題もあって、以前より執筆に比重を置いています。

Baccanoに通っていたのも取材のためだった。僕は取材をしていて、マテオはカウンターの向こう側にいた。そんな関係でした。

MATTEO

僕の場合はもっと単純です。

当時はディスコでPRをやっていて、夜の世界にはすでに関わっていました。

ただ、いわゆるカクテルバーの文化はほとんど知りませんでした。

ある時、バーテンダー養成コースの広告を見つけたんです。

その頃はまだ将来何をするか決めかねていた時期で、「とりあえずバーテンダーをやってみようかな」と思ったんですよ。

夜の仕事には慣れていたし、楽しそうだった。

そんな軽い気持ちで始めました。

でも実際にコースへ行ってみると、Rosario Agostaという人物に出会いました。

ヨーロッパのバー業界でも影響力のある人で、彼が僕をBaccanoへ連れて行ってくれたんです。

「新しいマネージャーが人を探しているから紹介するよ」と。

そこで働き始めたんですが、最初の数か月は本当に下積みでした。

水のケースを運んだり、雑用をしたり。

でも、その中でディスコのバーとはまったく違う世界を見たんです。

働いている人たちの動き方、サービスの考え方、お客様との接し方。

それを見ているうちに完全に魅了されました。

「これだな」

と思ったんです。

そこから今のキャリアが始まりました。

そして、その後オーストラリアへ行くことになるんですが、面白いことに、僕たちは最初から一緒に行こうとしていたわけじゃない。

たまたま同じタイミングでオーストラリアへ移住しようとしていたんです。

あとでそれに気付いたんです。ある日話していたら、

「え、メルボルン行くの?」
「お前も?」みたいな感じになって。

GIORGIO

本当に偶然でした。僕は10月にメルボルンへ移住する予定だったんですが、彼らが先に出発すると聞いて驚きました。結果的に 彼が先に行って、そのあと私たちが合流しました。そこから一緒に暮らし始めたんです。本当に特別な経験でした。

MATTEO

オーストラリアへ行くための準備はかなり大変でした。

当時はお金がなかったので、最後の2か月はBaccanoと別の店を掛け持ちして働いていました。

朝はBaccano、午後は別の店。

とにかく少しでも資金を作らなければならなかった。

ワーキングホリデービザを取得するためにも、ある程度の預金残高が必要でしたし、現地で家を借りるためのお金も必要でした。

当時は為替レートも良くて、1ユーロが1.6オーストラリアドルくらいでした。

だから準備できるだけ準備して出発しました。

GIORGIO

その頃、僕はジャーナリストの研修を続けていました。

もともとは映画を中心に書いていたんですが、同じ編集部にBlueBlazerの関係者がいて、その流れでバー業界に関わるようになりました。

最初の記事はHead to Headという大会の取材でした。

2016年か2017年くらいだったと思います。

その後、記者証を取得したんですが、正直なところジャーナリズムの世界は生活できるほど稼げません。

だからバーで働き始めたんです。

最初はジンコーナーでした。

その後オーストラリアへ行き、帰国してからもいろいろな店で働きました。

振り返ると、一か所に長く留まったことはあまりありません。

新しい技術を学びたかったし、新しい人と出会いたかった。

違うアプローチを見たかったんです。

僕は性格的に、一つの場所にずっといるタイプじゃないんですよ。

オーストラリア時代 ― イタリアとの違い、給与、働き方、教育システム

インタビュアー

オーストラリアではどのような違いを感じましたか?

MATTEO

まず言えるのは、働き方が全然違うということです。

イタリアよりもはるかにルールが明確です。

勤務時間、チェックリスト、担当業務。

すべてが細かく決まっています。

たとえば、自分の役割が決まっていたら、それ以外のことは基本的にはしません。

もちろん実際には助け合うこともあります。

でも、それは「やるべきだから」ではなく、自発的にやることなんです。

イタリアだと一人が何役もこなすことが普通ですよね。

人手が足りなければ誰かが補う。

でもオーストラリアでは、必要な人数を最初から雇います。

会社に資金があるからです。

だから一人を酷使して何役もやらせる文化があまりありません。

GIORGIO

それに、僕たち外国人は現地の人たちから見ると比較的安い労働力なんです。

もちろん生活できるだけの給料はもらえます。

でも彼らの基準からすると高くはない。

ただ、イタリア人からすると信じられないくらい条件が良いんです。

MATTEO

具体的に言うと、当時イタリアで普通のバーテンダーの給料は月1,500〜1,600ユーロ程度でした。

勤務時間は40時間契約でも、実際は45時間、50時間働くことも珍しくない。

一方で僕がオーストラリアで契約した時の給与は週900ドルでした。

月換算すると3,600ドル。

そこにチップが加わるので4,000ドル近くになる。

勤務時間は週35〜38時間程度です。

現地の人からすると普通の給料なんですが、イタリアから来た人間にとっては衝撃でした。

GIORGIO

僕もだいたい同じくらいでした。

3,000〜3,400ユーロ相当。

チップを入れると4,000近くになります。

ただし、生活費も高い。

給料は2週間ごとに支払われますが、家賃も2週間ごとです。

食費も高い。

さらにお酒が好きだと出費がすごい(笑)。

MATTEO

本当にそうです。

オーストラリアは「お酒好きに厳しい国」です。

イタリアではカクテルの価格は原価計算で決まります。

でもオーストラリアではアルコール量で価格が決まる。

1ショットならこの値段。

2ショットならこの値段。

非常にアメリカ的な考え方です。

税金も大きいですしね。

在庫管理もものすごく厳格です。

最初にフェルネット・ブランカでショットを作ろうとした時、周囲から驚かれました。

「何してるんだ?」と言われて。

僕としては、「フェルネットのショットだけど?」という感覚なんですが、

「それ40ドルするぞ」と言われた(笑)。

だからスタッフが飲むことにも厳しい。

飲酒そのものというよりコスト管理の問題です。

ショットを飲んだら記録しなければいけない。

店によっては完全禁止でした。

僕の店ではサービス用のショット枠があって、お客様に提供するか、自分で飲むか選べました。

でもそれも厳密に管理されていましたね。

月末になると全部計算されるんです。

100ショット消費されていたら、その100ショットがどこへ行ったか説明できなければいけない。

スタッフが20ショット飲んでいたら、その20ショット分のお金がどこにあるのか確認される。

そういう文化です。

ただ、その厳しさには良い面もあります。

仕事の質が安定するんです。

そして何よりメリトクラシーです。

実力主義。

これが本当に大きい。

もし入社した時の実力が「5」だとします。

会社は5として扱う。

でも努力して実力が8になれば、向こうから評価してくれるんです。

「君は成長した」

「給料を上げよう」

という話になる。

イタリアでは必ずしもそうではありません。

GIORGIO

僕が初めてバーコードスキャナーで在庫管理しているバーを見たのもオーストラリアでした。

本当にすべて管理されている。

その反面、生活費は高いし、社交性という面ではイタリアほど豊かではない。

でも仕事の経験を積む場所としては非常に優秀です。

もし若いバーテンダーから「海外へ行きたい」と言われたら、僕は迷わずオーストラリアを勧めます。

なぜか。

イタリアのバーテンダーは世界的に評価が高いからです。

世界中の有名バーへ行くと、ほぼ必ずイタリア人がいます。

オーナーだったり、ヘッドバーテンダーだったり、スタッフだったり。

それくらいイタリアのミクソロジーは強い。

だからイタリアでそこそこ経験を積んだ人がオーストラリアへ行くと、現地ではかなり高く評価されるんです。

結果として、イタリアにいたら何年もかかるようなポジションを早く経験できる。

バー・マネージャーやヘッドバーテンダーになれる可能性も高い。

MATTEO

そしてもう一つ。

僕が最も感銘を受けたのは教育制度です。

オーストラリアではアルコールを提供するために資格が必要です。

RSA(Responsible Service of Alcohol)ですね。

これは単なる技術講習ではありません。

酔った客への対応方法。

トラブルの回避方法。

危険な状況の管理方法。

そういったことまで教えます。

実際の安全講習です。

GIORGIO

イタリアではHACCPがあります。もちろん重要です。

でも基本的には食品衛生です。

一方でRSAは接客現場の安全教育まで含まれる。

たとえば泥酔した人が来店した場合。

どう対応するか。

どう断るか。

どう警備員へ引き継ぐか。

そういうことを学びます。

面白いのは、

「酔っている客には酒を出すな」

と正式に教えることです。

そこはイタリアとの大きな違いですね。

イタリアだと残念ながら、

「酔っている=もっと飲む=もっと売上になる」

という考え方が残っている場所もあります。

オーストラリアでは逆です。

酔っている人には提供しない。

それが当たり前なんです。

インタビュアー

つまり、オーストラリアで得たものは単なる技術ではなく、仕事の考え方そのものだった。

MATTEO

そうです。

技術だけならどこでも学べます。

でも組織の作り方、評価のされ方、教育の仕組み。

そういう部分を学べたことが、一番大きな財産だったと思います。

帰国後のキャリアとその後

インタビュアー

オーストラリアから帰国した後は、どのようなキャリアを歩んだんですか?

GIORGIO

僕は帰国してすぐにLanaで働き始めました。

その前後もいろいろな仕事をしながら、ライター活動を続けていました。

実はその頃、本も一冊書いているんです。

バーの仕事と執筆活動を並行しながら、Lana、その後Latteriaという流れでした。

MATTEO

僕の場合は少し違いました。

帰国してすぐに働き始めたというより、一度立ち止まったんです。

一年間海外で生活していたので、自分が次に何をしたいのか整理する時間が必要でした。

オーストラリアにいる間にローマのバーシーンから少し離れていた感覚もありましたしね。

だからまずは少し休んで、それから改めて仕事を探しました。

そして最初に戻ったのが?以前から関わりのあった会社です。

ちょうど新しい店舗を展開しているタイミングで、Amazoniaという店舗に入りました。

そこで別のスタッフと一緒に、複数の店舗運営に関わることになります。

その経験が大きかったですね。

それまでの自分は「現場のバーテンダー」でしたが、そこから少しずつマネジメント側の視点を持つようになりました。

その頃から夏のシーズンワークも始まりました。

最初のシーズンから、毎年のように夏はリゾート地へ行くようになりました。

2〜3か月だけ別の土地で働く。

それが3年ほど続きました。

GIORGIO

実は同じ年に僕たち二人ともサルデーニャにいたんです。

でも一度も会わなかった(笑)。

同じPorto Cervoにいたのに。

僕はConfusionというミシュランスターのレストランで働いていました。

マテオは別の店でした。

距離的には本当に近かったんですよ。

でもお互い忙しすぎて全然会えなかった。

メッセージを二回くらい送ったかな。

「今どこ?」

「Porto Cervo」

「俺も」

それで終わり(笑)。

MATTEO

その後Covidが始まり、僕はちょうどPorto Rotondoで働いていました。

そして運悪く、そこでCovidのクラスターが発生したんです。

イタリアでもかなり初期の早い段階でした。

ニュースで「感染者が出た」と聞いた瞬間、

「じゃあローマへ帰ります」と言って港へ向かいました(笑)。

GIORGIO

僕はそのまま残って検査を受けたりしていましたけどね。

MATTEO

僕は即撤退でした。

その後しばらくは本当に大変でした。

バー業界全体が止まりましたから。

営業できるのか。できないのか。明日どうなるのか。

誰も分からなかった。

会社に残りながら、状況に応じて現場へ戻ったり離れたりを繰り返していました。

本当に不安定な時期でした。

ただ、その中で学んだことも多かったです。

経営とは何か。現金の流れとは何か。

人を雇うとはどういうことか。

そういう部分を見る機会が増えました。

その後、友人たちと事業に参加することになりました。

Diego、Dario、Sergioたちと一緒です。

そこからさらに店舗運営に深く関わるようになりました。

一つの店だけではなく、複数の店舗を見るようになった。

その流れの延長線上に今があります。

GIORGIO

面白いのは、僕たちはずっと違う道を歩いているようで、結局また交差することなんです。

僕は執筆や教育寄り。

Matteoは現場や経営寄り。

一見すると全然違う。

でもバーという共通言語があるから、結局どこかでまた一緒に仕事をすることになる。

そして、その二つの視点が後になって一つのプロジェクトへつながります。

MATTEO

オーストラリアの経験もそうだし、帰国後の経験もそう。

僕らは違う形で同じものを見てきたんだと思います。

インタビュアー

それがSlaps & Punchですね。

MATTEO

そうです。そこからようやく今の話につながります。

それまでのキャリアで経験したこと全部が、結果的にSlaps & Punchの土台になりました。

現場経験。教育。執筆。マネジメント。海外経験。人とのつながり。

それら全部が一つになって、ようやく形になったんです。

GIORGIO

だから僕たちにとってSlaps & Punchは突然生まれた企画ではありません。

10年以上かけて積み上げてきたものの延長線上にあるんです。

そして、それこそが僕たちが伝えたいことでもあります。

バーの世界は一晩で成功する世界ではない。

一つ一つの経験が積み重なって、人を作っていく。

僕たちはその過程を伝えたいんです。

Slaps & Punch誕生 ― Podcastが生まれた理由

GIORGIO

実は、最初からPodcastを作ろうと思っていたわけではありません。

始まりは別のプロジェクトでした。

僕たちは二人とも「教育」に興味があったんです。

僕は少し前から。Matteoも後から同じ方向へ興味を持つようになりました。

それで、小規模な教育プロジェクトを立ち上げようと考えたんです。

プロ向けの講座やトレーニングを行うようなものですね。

実際にいくつかのコースも開催しました。

ただ、その後いろいろな事情があって、その計画は大きく発展しませんでした。

でも、その準備をしている間に別のことを始めたんです。

短い動画を作り始めました。

「Peroni e Maleducazione」というシリーズです(笑)。

今思えば著作権的に名前の付け方が良くなかったですね。

(今は全部非公開になっています。)

内容としては、バー業界のホットトピックについて話す短い動画でした。

業界の中で議論になっているテーマ。

意見が分かれるテーマ。

そういうものを少し挑発的に、少しユーモアを交えながら話していました。

MATTEO

それが予想以上に反応が良かったんです。

そして何より、自分たちが楽しかった。

そこで思いました。「じゃあ、ちゃんとPodcastにしたらどうだろう?」と。

GIORGIO

バー業界のPodcastはすでにたくさんあります。

だからこそ考えました。

自分たちは何をやるべきなのか。

どんな切り口なら意味があるのか。

MATTEO

その時に出た答えが、「人を語ろう」だったんです。

GIORGIO

僕たちにとってバーの一番面白い部分はドリンクではありません。

店舗でもありません。街でもありません。人なんです。

だからPodcastでは、「どんなカクテルを作るのか」ではなく、

「どんな人生を歩いてきたのか」を聞きたかった。

成功した話。失敗した話。苦しかった時期。

転機になった出来事。

その人がバーをどう見ているのか。どういう哲学を持っているのか。

そこに興味があったんです。

MATTEO

同じ仕事をしていても考え方は全然違いますからね。

GIORGIO

最初のゲストはDaniele De Angelisでした。

二人目はMassimo D’Addezio。

まったく違う人物です。

世代も違う。

歩んできた時代も違う。

バー業界の見方も違う。

でも両方とも素晴らしい話をしてくれました。

MATTEO

それが面白いんです。

バー業界には「正解」がありません。

人によって解釈が違う。

だから一人ひとりの物語を聞く価値がある。

Podcastの主役はバーではなく人なんですね。

GIORGIO

もちろん最終的にはバーの話になります。

僕たちはバー業界の人間ですから。

ドリンクの話も出る。

店舗の話も出る。

でも、それはあくまでその人の人生や考え方を語るための材料なんです。

MATTEO

例えば、「このバーについてどう思いますか?」

という質問にはあまり興味がありません。

でも、「あなたにとってバーとは何ですか?」

という質問には興味がある。

そこが違いです。

GIORGIO

収録前には必ずゲストへ聞きます。「話したくないテーマはありますか?」と。

でも面白いことに、今まで誰一人として制限を設けませんでした。

みんな本当にオープンだった。

それは本当にありがたいことです。

だからこの場を借りて改めて感謝したいですね。

出演してくれた全員に。

僕たちを信頼して、自分の話をしてくれたことに。

インタビュアー

お二人が一緒にインタビューすることにも意味があるんですか?

GIORGIO

大きな意味があります。

僕たちは同じ業界にいますが、立場が違うんです。

僕はライターとしての視点がある。コミュニケーション側。

MATTEO

僕は現場側。

僕は今も毎日バーに立っています。

だから質問の仕方も違う。

気になるポイントも違う。

GIORGIO

結果として、一人では見えない角度からゲストを見ることができる。

それがPodcastの強みになっています。

MATTEO

360度の視点ですよね。

GIORGIO

まだ始まったばかりです。

第一シーズンを終えたところですし。

でも少しずつ反応も増えています。

MATTEO

実際、スペインのバレンシアで働いている若いバーマネージャーからメッセージが来ました。

全部のエピソードを聴いてくれていて、「とても参考になった」と言ってくれた。

しかもゲスト出演まで提案してくれました。

あれは嬉しかったですね。

ローマだけじゃなく、他の国にも届き始めている。

大きな励みになっています。

GIORGIO

もちろん僕たちはSNS運用の専門家ではありません。

マーケティングチームもいません。

全部自分たちでやっています。

MATTEO

本当に手探りです。「やってみよう」から始まった。

でも結果が出始めている。だから続けたい。

もっと良いものにしたい。何より楽しいんです。

GIORGIO

そして学べる。これが大きい。

毎回ゲストから何かを学びます。

Antonio Tittoniとの回もそうでした。

Eleonora De Santisもそう。

Christian Comparoneもそう。

Mario Farullaもそう。

誰かと話して何も得られなかったことはありません。

もし何も得られないとしたら、それはインタビュアー側の失敗です。

ゲストから学び、視聴者にも学びを届ける。

それがPodcastの役割です。

そして、それがSlaps & Punchを作った理由でもあります。

教育、SNS、知識継承の危機

インタビュアー

ゲスト選びをみると、単に有名なバーテンダーを呼んでいるわけではないように感じます。

MATTEO

そうですね。もちろん尊敬している人たちを呼んでいます。

でも、それだけじゃありません。

僕たちが重視しているのは、その人が何を語れるかです。

例えばMassimo D’Addezioならホテル業界について話せる。

Daniele De Angelisなら教育やキャリア形成について話せる。

RiccardoやEleonoraなら、バーテンダーからプロダクト開発者へ転身した経験について話せる。

Tonyなら店舗経営について語れる。

Marioなら哲学的な話もできる。

それぞれ違う視点を持っているんです。

GIORGIO

もし同じタイプのバーテンダーを10人呼んだら、最終的には似た話になります。

もちろん細かな違いはあります。

でもキャリアの構造は近い。

だから僕たちはできるだけ異なる経験を持った人を呼びたいんです。

MATTEO

同じバー業界でも、歩んできた道は全然違う。

それを見せたい。

それがPodcastの価値だと思っています。

GIORGIO

そして何より大事なのは、「聞いている人が何を持ち帰れるか」なんです。

例えば、全員が「世界最高のバーテンダーになった方法」を聞きたいわけではありません。

MATTEO

そう。もしかしたら今まさに初めてバーマネージャーになった若い人が聞いているかもしれない。

その人にとっては、世界チャンピオンの話よりも、「どうやって店舗を運営するか」の方が役立つこともあります。

GIORGIO

だから僕たちは様々な視点を提供したい。

聞く人それぞれが、自分に必要なものを見つけられるように。

MATTEO

そしてここからは少し率直な話になります。

今のバー業界で失われつつあるものがあります。

インタビュアー

それは何ですか?

MATTEO

知識の継承です。技術の継承です。職人としての伝承です。

昔は先輩が後輩へ教えた。経験を渡した。失敗も共有した。

でも今はそれが少なくなっている。

正直に言います。

今のバー業界には「自分だけが知っていればいい」と考える人が増えています。

技術も知識も自分の武器として抱え込む。

それを墓場まで持っていく。

そんな人も少なくありません。

GIORGIO

もちろん全員ではありませんが、そういう傾向はあります。

MATTEO

僕はそれが嫌なんです。

本当に嫌なんです。

なぜなら、この仕事は先人たちから学んできた仕事だから。

僕だって誰かから教わった。

誰かの経験のおかげで成長できた。

だったら今度は自分が返す番でしょう。

インタビュアー

その思いがPodcastにもつながっている?

MATTEO

完全につながっています。

僕たちがやっていることも、ある意味では知識の継承なんです。

GIORGIO

しかも継承の方法は一つではありません。

昔のようにバーのカウンター越しに教えることもできる。

Podcastで語ることもできる。

記事を書くこともできる。

方法はいくらでもあります。

MATTEO

ただ最近は別の問題もあります。

インタビュアー

SNSですか?

MATTEO

そうです。

SNSそのものが悪いとは思っていません。

でもSNSはバー業界を大きく変えてしまった。

今は「見せること」が目的になりすぎている。

自分がどれだけ上手にカクテルを作れるか。

どれだけ難しい技術を持っているか。

どれだけフォロワーがいるか。

そこばかりに意識が向いている。

ショーケース化している部分があります。

でもね。

カクテルを作ることは仕事の一部に過ぎないんです。

極端な話をすれば、完璧なカクテルを作る機械だって作れるかもしれない。

でも機械はバーを作れない。

インタビュアー

バーを作れない?

MATTEO

そう。

バーとは人間関係です。

会話です。

空気です。

信頼です。

居心地です。

GIORGIO

昨日もそうでした。

お客様が一杯だけ飲んで帰る予定だった。

でも話をしているうちに、もう一杯。

さらにもう一杯。

最後にはショットまで飲んでいた。

MATTEO

それはカクテルが特別だったからじゃない。

その時間が楽しかったからです。

GIORGIO

人はドリンクだけを買いに来ているわけではない。

体験を買いに来ている。

MATTEO

それこそがバーの本質です。

SNS時代、そしてバー業界の未来

インタビュアー

SNSは現在のバー業界にどのような影響を与えていると思いますか?

GIORGIO

SNSについてですが、一つにまとめて語るのは難しいですね。

なぜなら、バーのSNSとバーテンダー個人のSNSは別物だからです。

もしSNSが店の魅力を伝えるために使われているなら、それは素晴らしいことです。

店の雰囲気。サービス。体験。

そこで何が得られるのか。

そういったことを伝え、お客様を店へ導くために使うのであれば、とても有効なツールです。

でも、もし目的が「自分がどれだけ優秀かを見せること」

だけになっているなら話は別です。

「自分はすごい」「自分は他人より上だ」

ということを見せるためだけの発信になってしまうと、本質から離れていく。

MATTEO

僕も同じ意見です。

ただ、SNSには良い面もあります。

それは教育です。

僕は料理業界とバー業界をよく比較するんですが、料理は誰でもある程度理解できます。

家で料理をしますから。

だから高級レストランへ行った時も、

「この料理は手間がかかっているな」

ということが何となく分かる。

でもカクテルは違います。

お客様はグラスの中しか見えない。

何が使われているのか。

どんな技術があるのか。

なかなか分からない。

だからSNSがカクテル文化を伝える役割を果たしていることは事実です。

昔よりもお客様は知識を持っています。

原材料を知っている。

蒸留所を知っている。

技術を知っている。

それはSNSのおかげでもある。

GIORGIO

問題は、その先ですね。

MATTEO

SNSは本来、人をバーへ近づけるためのものだったはずです。

バー文化を知ってもらうためのものだったはずです。

そして教育のためのツールだったのに、

「有名になるためのツール」

になってしまった部分がある。

そこが難しいところです。

SNSそのものを否定しているわけじゃありません。

ただ、「バーテンダーであること」より「インフルエンサーであること」

を優先してしまう人が増えた。

そこには危うさを感じます。

もちろん例外もあります。

本当に良い発信をしている人たちもいる。

GIORGIO

SNSもマーケティングも大切です。

でも最後にお客様が覚えているのは、

「誰と会ったか」なんです。

結局、僕たちはそこへ戻るんですよ。

人です。

MATTEO

どんな会話をしたか。

どんな時間を過ごしたか。

どんな気持ちになったか。

バーは人なんです。

GIORGIO

それは数字にはなりません。

でも最も大切な部分です。

MATTEO

だから僕たちはPodcastでも人を語り続けたい。

有名なバーではなく。

有名なドリンクではなく。

人を。

GIORGIO

バー業界の未来も同じだと思います。

技術は進化する。

SNSも変わる。

でも最後まで残るのは人と人との関係です。

MATTEO

そして、それこそが僕たちが Slaps & Punch で伝えたいことなんです。

バーとは何か。

バーテンダーとは何か。

その答えはカクテルの中ではなく、人の中にある。

そして僕たちが目指す方向は、人を育てること。

考えるきっかけを作ること。

経験を共有すること。

それを続けたいんです。

GIORGIO

だからSlaps & Punchは単なるエンターテインメントではありません。

MATTEO

ある意味で教育プロジェクトなんです。

最初にやろうとしていた教育活動が、別の形になっただけ。

僕たちは今も同じことをやっているんです。

ただ教室ではなく、マイクの前で。

GIORGIO

もし人々がこれらの会話から何かを学び、

誰かの物語からインスピレーションを得ることができれば、

私たちはまさに当初の目的を達成したことになります。

結局のところ、本当の問いは「カクテルとは何か?」ではないからです。

本当の問いは、「バーテンダーであるとはどういうことか?」です。

そして私たちにとって、その答えはグラスの中にはありません。

それは人々の中にあるのです。

ジョルジオとマッテオとの会話は、まるで彼らのポッドキャストを聴いているかのよう魅力的で、ちょっとした会話のつもりだったのに、気づけば1時間半以上が過ぎていた。

「Slaps & Punch」はイタリア語で収録されているが、ほとんどのエピソードはYouTubeで英語字幕付きで視聴できるため、世界中のリスナーが楽しめる。

このプロジェクトで特に興味深いのは、ゲストの多様性だ。バーテンダーに限らず、バーのオーナー、教育者、マネージャー、コンサルタントなど、ホスピタリティ業界の様々な専門家がそれぞれの経験を語ってくれる。リスナーは従来の業界インタビューではなかなか聞くことのできない視点に触れることができる。

カクテルのレシピやバーの技術についての会話だけを期待しているなら、「Slaps & Punch」は一味違うことにすぐに気づくだろう。エピソードでは、アイデンティティ、一貫性、野心、成功と失敗、お金、個人の価値観、リーダーシップ、そしてキャリアを形作る難しい決断といったテーマが頻繁に取り上げられる。バー業界が出発点ではあるものの、会話はより広いテーマへと広がっていく。

イタリアのバーシーンに興味のある方にとって、マリオ・ファルッラやダニエレ・デ・アンジェリスといった人物が登場するエピソードは、特に興味深い洞察を与えてくれるだろう。業界リーダーたちがどのように考え、哲学をどのように発展させ、長年にわたるホスピタリティ業界での経験を経て、成功をどのように定義しているのかを明らかなる。

「Slaps & Punch」の最大の強みは、ホスピタリティとは究極的には人に関わるものであることを思い出させてくれる点だ。成功したバー、名高いバーテンダー、そして素晴らしいカクテルの背後には、語るべき人間ドラマが存在する。

ジョルジオとマッテオは、まさにそれを伝えようとしている。彼らのポッドキャストは、バーに人生を捧げる人々について語るものなのだ。

Slaps & Punch
RELATED POST