Le Ghiottonerie del Moro: 家族レストラン

チヴィタ・カステッラーナは、ローマから北へ車で1時間ほど、ラツィオ州北部にある小さな町だ。古くから陶器の生産で知られ、今も町には多くの陶器メーカーや工房がある。家族や地元の人同士の距離も近く、レオナルド・モレッリの話を聞いていても、両親や祖母、兄、地元の作り手など、自然といろいろな人が登場する。
彼の家族が営むル・ギオットネリエ・デル・モロは、2003年にガストロノミア(惣菜店)としてスタートした。その後レストランへと発展し、最近では町の広場にジェラテリアもオープンしている。
20年以上の間に、店の形はずいぶん変わった。でもレオナルドに話を聞いていると、何か大きな計画に沿って進んできたというより、目の前にある面白いものに興味を持ち、「じゃあ、やってみよう」と試してきた積み重ねが、今のモロにつながっているように思える。
レオナルドは料理学校を卒業したあと、シーズンごとの仕事などをしながら料理人として経験を積み、両親の店に戻ってきた。そんな彼が料理の話をするなかで登場したのが、現在91歳になる祖母だった。
祖母は今でも自分の手でパスタを打つ。そして3歳になるひ孫が彼女の家へ遊びに行くと、最初に「おばあちゃん、料理しよう?」と言うのだそうだ。
91歳の曾祖母と3歳のひ孫が一緒に料理をする。レオナルドの家族では、料理を教えたり習ったりすることが、「伝統を受け継ぐ」みたいな大袈裟なものではなく、もっと日常的なものなのだ。
もうひとつ面白い特徴が、モロがガストロノミアから現在のレストランへと至った経緯だ。
「昔からのお客さんがいなくなったわけではないんです」とレオナルドは話す。
最初からレストランにしようと計画していたわけではない。長く店を続けるなかで、通ってくれる人たちも年齢を重ね、家族構成や生活のリズム、夜の過ごし方、食事にかける時間も少しずつ変わっていった。
お客さんが入れ替わったのではなく、同じ人たちの暮らし方が年月とともに移り変わってきたのだ。
そうやって通ってくれる人々の生活に合わせながら、モロもその時々に合った店のあり方を探してきた。ガストロノミアとして始まった店が今のレストランになったのも、そうした20年以上の積み重ねの結果なのだ。




そんなふうに、身の回りの変化を見ながら店をつくってきたモロは、料理のアイデアの見つけ方も面白い。日々の仕事や人とのやり取りといったところから、新しいメニューにつながることがある。
たとえば、テイクアウトで受けた少し変わったリクエストから、「これならこんな料理ができるかもしれない」メニューに入ったり、旅先で気になる料理や食材に出会えば、店に戻って実際に試してみる。シチリアへの旅をきっかけに、ひとつの料理を何日もかけて試作したこともあったという。
「小さなきっかけがひとつあるだけで、すぐ試してみたくなるんです」
レオナルドは楽しそうに話す。
そんなレオナルドの興味の対象は、イタリア料理の範囲にとどまっていない。
特に日本料理をはじめとするアジアの料理には、以前から強く惹かれてきたと言う。とはいえ、興味があるのはいわゆる「フュージョン料理」ではない。
彼が興味を持ったのは、食材の扱い方、包丁の入れ方、火入れ、細かな技術。何より、食材そのものを大切にする考え方だった。
そこで知った技術を、そのまま日本料理として再現するのではなく、まず自分たちの料理にどう生かせるのかを考える。
こうやって外から得たアイデアも取り入れながら、料理の軸は変わらずイタリアにある。
パスタは自分たちで打ち、キッチンで作れるものはできるだけ店内で作る。それがモロの基本だ。
クリスマスやイースターの時期には、パネットーネやコロンバ、伝統的なチーズブレッドといった自然発酵の焼き菓子も自家製で用意する。
ただ、毎年同じことを繰り返しているわけではない。
作りながら学び、改善し、客の反応にも耳を傾ける。翌年になれば、また違うことを試してみる。

最近では、レストランで続けてきたことを別の形でも展開しようと、町の広場にジェラテリア・クレメンティーノをオープンした。ジェラートを通してこの土地の魅力を伝えるだけでなく、チヴィタ・カステッラーナの中心部にもう少し人が集まるきっかけを作りたいという思いもあったという。
今回のイベントでは、私たちも実際にジェラートを味わった。レストランとはまったく違う業態だが、話を聞いていると、ここでもやはりレオナルドたちはいろいろと試している。作って終わりではなく、お客さんの反応を見たり、もっと良くできないか考えたりしながら、少しずつ自分たちのものにしているようだった。

もうひとつ、モロを語るうえで欠かせないのが陶器だ。
チヴィタ・カステッラーナは陶器の町として知られ、レオナルドの家族にとっても昔から身近な存在だった。店では地元の作り手と一緒に器を作ったり、陶器を本来とは違う用途で使ったりしている。なかには、ラビオリの形をそのままデザインした特注のプレートもある。
レオナルドが大切にしているのは、料理そのものだけでなく、どんな器に盛り、どんなワインと一緒に楽しんでもらうかということ。料理とワイン、そして地元で作られる陶器をひとつのテーブルの上で一緒に楽しんでもらうことで、チヴィタ・カステッラーナという土地のことも知ってもらいたいという。
そしてワインについては、ソムリエであるレオナルドの兄が大きな役割を担っている。
兄弟ともにワインが好きで、その延長から生まれたのが「イル・モロ・ディ・ヴィーノ」というイベントだ。
ここでは、さまざまな生産者や銘柄が紹介されている。よく知っている名前だけにこだわらず、普段はなかなか選ぶ機会のないワインも「ちょっと飲んでみようかな」と気軽に試してもらいたいと言う考えだ。


私たちが参加した回には、ワインを使ったカクテルも登場した。
「ワインカクテル」と聞けば、新しい試みに思えるかもしれない。けれどイタリアには昔から、夏になるとワインを炭酸水などで割り、軽く楽しむ習慣がある。
昔からあるものでも、使い方や見せ方を少し変えれば、また違った楽しみ方が生まれる。
2003年にガストロノミアとして始まったモロは、20年以上をかけて今のレストランになり、自家製のパスタや焼き菓子を作るだけでなく、最近ではジェラテリアも始めた。地元の陶器を店に取り入れたり、日本料理から学んだ技術を自分たちの料理に生かしたり、ワインを使ったカクテルを試したりと、レオナルドの話を聞いていると本当にいろいろなことが出てくる。
それでも、何か新しいことをするために、昔からあるものを手放してきたわけではない。91歳の祖母が今もパスタを打っているように、家族の中でずっと続いてきたものを大切にしながら、面白い食材や技術、人に出会えば、自分たちでもやってみる。モロでは、その両方がごく自然に一緒にあるように感じた。
最近ではテイストリモートとも協力し、土地や食にまつわる体験を通して、チヴィタ・カステッラーナを訪れるデジタルノマドと地域の人たちをつなぐ取り組みにも参加している。
こうしてレオナルドの話を聞いていると、新しいアイデアは必ずしも遠くから探してこなくてもいいのだと思えてくる。お客さんから受けたちょっと変わったリクエストや、旅先で気になった料理、地元で昔から作られている陶器、そして祖母が今も打っているパスタまで、身近にあるものが次のアイデアにつながっている。
「これをやってみたら、どうなるだろう?」
そんな好奇心が、家族で始めた小さなガストロノミアを20年以上動かし続けてきたのだろう。
Le Ghiottonerie del Moro

https://leghiottoneriedelmoro.it/



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