ORO BISTROT: Back to the Bar

ダニエレサンドリの新しいドリンクリスト
March 12, 2026
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Bar
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古代ローマの遺跡を見下ろすテラス。ここからは、かつてローマ帝国の政治と権力の中心であったフォルム(帝国広場)が目の前に、視線を少し上げると、白い大理石の巨大な建造物 ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世記念堂(祖国の祭壇)が、堂々とそびえ立ちます。そんな景色と共に、オロ・ビストロ のルーフトップレストラン&カクテルバーでは、まるでタイムトラベルをするようなカクテルを楽しむことができます。

テラスからの眺め

現代風にアレンジされたクラシックカクテル

オロ・ビストロのカクテルプログラムは、バーマネージャーのダニエレ・ザンドリが手掛けています。「Back to the Bar」と題されたドリンクリストは、カクテルの本質に立ち返るという明確なコンセプトから生まれました。

メニューは、1880年から1950年の間に誕生したものの、時の流れとともに忘れ去られてしまったクラシックカクテルを中心に構成されています。ザンドリはまず、オリジナルの歴史的レシピを研究し、その真の味を理解するために、その通りに再現しました。

その後、フレーバーの構造を分析し、現代の技術を駆使してカクテルを再構築し、新たな解釈を生み出したのです。

Back to the Bar メニュー

これらの歴史的レシピの多くは、(当時としてはバランスの取れた)食後に飲む強めのドリンクとして定着していました。そのため、現代の飲み方に合うよう、アルコール度数を微調整することで、より滑らかで飲みやすく仕上がっています。

使用される技術には、材料の香りを引き出すインフュージョン、クリーンで透明感のある風味を生み出す清澄化、そして新たなテクスチャー表現などさまざま。厳選されたスピリッツと材料を使用し、人工着色料は一切使用していません。風味、香り、そして見た目の演出は、すべて綿密にデザインされています。

メニュー自体も細部までこだわって作られています。オリジナルの伝統的な材料、その背景にある物語、そして現代的な解釈を並べて見渡すことができるよう設計されているのです。

それぞれのカクテルには物語があり、一つ一つのドリンクの名前、盛り付け、そしてコンセプトの中に、このカクテルが初めて誕生した時代の文化と歴史が、さりげなく表現されています。

さらに、新しいアレンジだけでなく、オリジナルのクラシックカクテルもオーダー可能です。

クラシックと現代版を飲み比べてみると、その違いや魅力をより深く感じることができるでしょう。

Daniele Zandri

MOONLIGHT

アビエーションを現代的にアレンジ

オロ・ビストロのカクテルメニューの中でも、特に美しいビジュアルを誇るのが 「ムーンライト」。

これはクラシックカクテルのアビエーション(Aviation) をベースに、現代的に解釈したカクテルです。

アビエーションは、1910年代に生まれた歴史あるカクテルで、ジン、レモン、マラスキーノ、そしてヴァイオレットリキュールを使った、爽やかで香りのよいカクテルです。その名の通り、空にインスピレーションを得たこのカクテルは、ほんのり青紫色に見えるのが特徴でした。

このカクテルが広く知られるようになったのは、1916年、ニューヨークのワーウィックホテルで働いていたバーテンダー、ヒューゴ・エンスリンがカクテル本『Recipes for Mixed Drinks』を出版した時です。この本に掲載されたアビエーションのレシピは、瞬く間にカクテル界に広まりました。

しかしその後、禁酒法の時代になると、ヴァイオレットリキュールの入手が困難になります。そのため、 1930年のサヴォイ・カクテル・ブックにはクレーム・ド・ヴァイオレットのレシピが掲載されておらず、長年、本来の色は再現されていませんでした。

転機が訪れたのは2007年。リキュールメーカー Rothman & Winter がクレーム・ド・ヴァイオレットを復活させたことで、多くのバーテンダーが本来のレシピを再発見し、クラシックカクテルとして再び注目されるようになったのです。

オロ・ビストロでは、この歴史的なドリンクがムーンライトとして生まれ変わりました。

ベースは力強い風味を持つネイビー ストレングス ジン。シャルドネ、アロエ、ローズ、エルダーフラワー、ヴァイオレットをブレンドすることで、繊細な花の芳香と柔らかなニュアンスが感じられます。

口に含むと、ジンのハーバルな香りの後に、白ワインのような軽やかさとフローラルなアロマがふわっと広がり、とてもエレガントな印象です。

しかし、このカクテルの魅力は味だけではありません。グラスに注がれたムーンライトは、見る角度によって色が変わります。

真上から見ると、まるでマティーニのように透明。しかし横から見ると、グラスの中に 淡い青紫色の層が浮かび上がり、まるで月明かりのように幻想的な美しいカクテルです。

ムーンライト

TENSHI NO KAO

エンジェルフェイスを日本の感性で表現

メニューの中でもう一つ印象的なカクテルは 、天使の顔(TENSHI NO KAO)です。
これは、クラシックカクテルのエンジェルフェイス(Angel Face) をベースにしています。

エンジェルフェイスは、1930年ハリー・クラドックの有名なカクテル本 であるサヴォイ・カクテル・ブックに登場します。

ジン、アプリコットブランデー、カルヴァドスという3つの材料だけで作られますが、シンプルながらも、ボタニカルの爽やかさとフルーティーな甘さが融合した、驚くほど奥深いカクテルです。

天使の顔では、このクラシックを日本の感性で再解釈。レシピには、日本酒、チパンゴ(焼酎カテゴリーの​​スピリッツ)、ゴーヤのアマーロ、グラニースミスアップル、アプリコット、ピーチ、そして スーパーサワー が使われています。日本酒が加わることで、フルーツの風味と美しく調和し、まろやかな旨味を感じます。

ひと口めには、やさしい香りが広がり、続いて日本酒のやわらかな旨味。フルーティーでなめらかな口当たりに、甘さ、酸味、旨味がバランスよく重なる上品なフルボディカクテルです。

エンジェルフェイスは、クラシックカクテルの中でもあまりアレンジされることの少ないカクテルですが天使の顔は、オリジナルへの敬意と斬新な発想の両方を表現しています。

天使の顔

STINGLESS

定番のスティンガーを優しく再構築

メニューの中で、少しユーモアのある名前を持つのが 「スティングレス」。これはクラシックカクテルの スティンガー(Stinger) をベースにしています。

スティンガーは、1913年に出版された『カクテル・マニュアル』にも掲載されている歴史あるカクテルで、コニャックとクレーム・ド・ミントというシンプルな組み合わせで作られます。

スティンガーとは「刺す」という意味です。映画『上流社会』の中で、ビング・クロスビーがグレース・ケリーにこのカクテルを説明する際にこう言いました。

「これはスティンガーというカクテル。刺すような痛みを和らげてくれるんだ。」

1920年代には、アメリカの大富豪レジナルド・ヴァンダービルトのおかげで広く知られるようになり、ニューヨークの社交界で人気を博しました。かつては、食後に軽く飲む力強いカクテルとして知られていたようです。

オロ・ビストロの スティングレス は、その名の通りピリッとした刺激のない、ソフトでモダンな仕上がり。

レシピには ホワイトコニャック、ミント、タラゴン、ブルーベリー、ティムールペッパーが使われています。ミントの清涼感、タラゴンのハーブ香、そこにブルーベリーのやさしい甘みが広がり、最後にほんのりスパイスのニュアンスが感じられます。

定番のスティンガーは力強い味わいで知られていますが、スティングレスはなめらかで優しく、フレッシュでほのかな甘みが特徴です。

スティングレス

SMOKING

クラシックカクテル「タキシード」をスモーキーにアレンジ

メニューの中でもひときわ印象的なのが、タキシード(Tuxedo) をベースにした「スモーキング」です。

タキシードは1900年頃に登場した歴史あるカクテルで、ジン、ドライベルモット、マラスキーノ、オレンジビターズ、アブサンを使って作られます。

ジンベースのとても優雅なカクテルで、ドライマティーニのルーツのひとつとも言われています。

起源については諸説あり、1880年代にバーテンダーのハリー・ジョンソンによって考案されたという説や、ニューヨーク近郊のタキシードクラブで誕生したという説などがありますが、はっきりした起源はわかっていません。

タキシードという名の通り、このカクテルは常に洗練されたイメージを帯びてきました。

オロ・ビストロのスモーキングでは、このクラシックカクテルを大胆にアレンジしています。

オールド・トム・ジンとシャンベリーのドライベルモットに、タバコのアロマ、ルー(ハーブの一種)、ビターズを組み合わせ、複雑な香りを作り出しています。

そして、このカクテルは、カクテルをグラスに注いだあと、実際にスモークを焚いて香りを閉じ込めます。第一印象は柔らかな燻香。口に含むとドライでシャープな味わいが広がり、スモーキーな余韻が長く続きます。

落ち着きがあり洗練された気品のあるカクテルです。

バーカウンターの様子

FLACO

メキシコの定番カクテル、バタンガをスタイリッシュに

フラコは、メキシコのクラシックカクテル、バタンガ (Batanga) をベースにしたカクテルです。

バタンガは1960年代に誕生し、テキーラ、ライムジュース、メキシカンコーラ、塩で作られています。キューバ・リブレに似ていますが、ラム酒の代わりにテキーラが使われており、メキシコで大変親しまれてきたドリンクです。

このカクテルを有名にしたのは、メキシコのバーテンダー、ドン・ハビエル・デルガド・コロナ。

1950年代、彼はバー「ラ・カピラ」を開店し、独自の方法でバタンガを提供しました。彼の手法は大胆で、短くて厚いグラスにたっぷりのテキーラを注ぎ、ライムを切ったばかりのナイフそのままグラスに入れて混ぜるという、少し荒々しいスタイルです。そんな大胆な作り方も、このカクテルの魅力のひとつでした。

オロ・ビストロのフラコ は、このクラシックカクテルをより洗練された形にアレンジしたもの。

レシピには ローストパイナップルのテキーラ、オークモスのリキュール、グレープフルーツビターズ、サワーコーラコーディアルが使われています。

パイナップルの甘く香ばしい香りと、グレープフルーツのほのかな苦味、フレッシュな味わいが広がります。自家製コーラのスパイス感も感じられ、どこか懐かしくも新しいニュアンスです。

オリジナルのバタンガは力強くワイルドな味わいですが、フラコはテキーラの個性を際立たせながらも、より滑らかで飲みやすくなっています。

グラスには、このカクテルを有名にしたメキシコ人バーテンダーを彷彿とさせる食べられるガーニッシュが飾られており、メキシコのバー文化へのささやかなトリビュートとなっています。

フラコ

CARRÉ ÉTRANGÈRE

ニューオーリンズの名作ヴュー・カレを現代的にアレンジ

カレ・エトランジェールは、ニューオーリンズの名物カクテル、ヴュー・カレ(Vieux Carré)からインスピレーションを得ています。

ヴュー・カレは、1938年、ホテル・モンテレオーネのカルーセル・バーで、バーテンダーのウォルター・ベルジェロンによって作られました。

名前はフランス語で「古い広場」を意味し、ニューオーリンズの歴史的地区フレンチ・クォーターを指しています。

このカクテルは、ライウイスキーとコニャックの組み合わせで知られています。アメリカのスピリッツとフランスのスピリッツが一つのグラスの中で混ざり合う姿は、フランスとアメリカの文化が混ざり合うニューオーリンズの街そのものを表しているようです。

ニューオーリンズはジャズ発祥の地としても有名であり、カクテルの歴史においても重要な場所です。名作カクテルのサゼラックでも使われるペイショーズ・ビターズが、このカクテルにも使用されています。

オロ・ビストロのカレ・エトランジェールは、このクラシックを現代的にアレンジした一杯。レシピには ホワイトウイスキー、バーボン、デュボネ、ダムソン(プラム)、タイム、チェリービターズ、スパニッシュビターズが含まれています。

まずウイスキーの芳醇な香りが立ち上り、続いてプラムのフルーティーな甘さとタイムの爽やかな香りが広がります。

口に含むと、ウイスキーのコクの中に果実の甘さ、ビターズが深みを加えます。とてもバランスのよい味わいです。しっかりとした重厚な雰囲気を残しながらも、新しい感覚で楽しめます。

Back to the Bar のカクテル

BREWERY N.1

ビールにインスパイアされた、定番のティペラリーのリメイク

メニューの中でも特にユニークなカクテルの一つが、クラシックカクテルの ティペラリー(Tipperary)をベースにしたブルワリー N.1です。

ティペラリーは20世紀初頭に誕生し、1916年にヒューゴ・エンスリンのカクテルブック『Recipes for Mixed Drinks』に掲載されました。名前の由来は、当時人気だった歌「It’s a Long, Long Way to Tipperary」から来ていると言われています。

クラシックなレシピでは、アイリッシュウイスキー、グリーンシャルトリューズ、スイートベルモットを組み合わせ、豊かなウイスキーの風味とハーブの複雑な香りが重なり合う個性的な味わいのカクテルです。

長い間あまり知られていないカクテルでしたが、ニューヨークのザ・デッド・ラビット(The Dead Rabbit) など有名バーで登場し、再び脚光を浴びるようになりました。

ブルワリー N.1 は、このティペラリーを新しい形で表現しています。ベースはIPAでインフューズされたアイリッシュウイスキー。そこに スタウトビール、ビターベルモット、カルダモンをブレンドしています。

ウイスキーのローストされた香ばしい香り、そこにビールのほろ苦さと麦の香りが重なり、カルダモンがほのかなスパイスを加えます。

ビールが使われていることで、クラシックのティペラリーよりも少し軽やかで飲みやすい印象です。このカクテルは、ビール文化でも知られる アイルランドへのオマージュでもあります。

スズキのセビーチェ
牛肉のタルタル

カクテルと合わせて楽しめる小皿料理

オロ・ビストロの魅力は、カクテルだけではありません。料理のレベルの高さも大きな魅力です。

爽やかな酸味と魚の旨味が広がる スズキのセビーチェ(Ceviche di spigola) や、マスタードと黒トリュフを添えた牛肉のタルタル(Tartare di manzo, senape e tartufo nero) など、素材の魅力を生かした料理が並びます。

特に面白いのは、カクテルと料理の相性までしっかり考えられていること。
ハーブやスパイスを使ったセイボリーな食事系カクテル は、料理と絶妙にマッチし、一緒に味わうことでより一層の味わい深さを堪能できます。

アペリティーヴォタイムには、特別なドリンクペアリングメニューや季節のグルメタパスも用意されています。気軽に一杯飲みながら、心を込めて調理された満足感あふれる料理も味わえるのがこのバーのもうひとつの魅力です。

キッチンを率いるのは、イタリア料理界で広く知られる エグゼクティブシェフ兼オーナー、ナターレ・ジュンタ。厨房でで日々の仕事を支えているのは、専属シェフのケリム・モンティナーロです。

伝統的なイタリア料理をベースにしながらモダンなアレンジを加えた料理は、カクテルの創造性にマッチしたダイニング体験を生み出しています。

うっとりするような景色のテラスで、芸術のような食事とカクテル。オロ・ビストロは、ローマの夜を特別なものにしてくれる場所です。

Oro Bistrot
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