移動せずにイタリア最高峰のバーを巡る6日間

ALTO Cocktail Festivalがつくる料理とカクテルとホスピタリティの旅
September 5, 2026
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Megumi Ueda

イタリアでバー巡りをするなら、移動はつきものだ。

ミラノで一杯飲んだ翌日にフィレンツェへ。その次はボローニャ、あるいはローマへ向かう。列車に揺られ、ホテルを移りながら、それぞれの街の一軒を訪ねる。もちろん、そんな旅もイタリアならではの楽しみだ。

ところが一年に一度、各地を巡らずともイタリアのトップバーに出会える6日間がある。

舞台は、アドリア海に面したリゾートタウン、チェルヴィア。ここで開催されるのが、ALTO カクテル フェスティバル(ALTO Cocktail Festival)だ。

ALTO Rooftop

会場は、ヴィラ・デル・マーレ・スパ・リゾートの7階にあるALTO ルーフトップ。

海を見渡すテラスに、イタリア各地のバーやレストラン、シェフ、ピッツァイオーロ、さらに海外からのゲストが集まる。

第5回を迎えた2026年は、イタリア国内から24組、海外から6組が参加。6日間にわたって業界関係者とカクテル愛好家が集まり、普段なら別々の街で出会う人たちが同じ場所でグラスを交わした。

ALTO カクテル フェスティバルは試飲ブースを順番に回るというような展示会ではない。有名バーテンダーが一晩だけカウンターに立つ一般的なゲストシフトとも少し違う。

6日間をここで過ごしてみると、このフェスティバルの魅力は「有名な店を一度に体験できること」だけではないことがわかってくる。

カクテル、料理、音楽、そして海を眺めながら交わされる会話。そのすべてが、同じ流れの中にある。

Edoardo Tilli - Podere Belvedere
Yohei Hayashi - Podere Belvedere

まだ明るい夕暮れから深夜のピザまで

ALTO カクテル フェスティバルは、まだ空に明るさが残る時間から始まる。

19時から21時までは、地上階にあるラウンジでイタリアンアペリティーボ 。毎晩異なるバーを迎え、ライブクッキングとともに、その店のスタイルを生かしたアペリティーボが提供される。

21時になると、舞台は7階のルーフトップへ移り、「レストラン エクスペリエンス」と「バー エクスペリエンス」が始まる。

レストラン エクスペリエンスでは、ALTOのレオナルド・ディンジョー(Leonardo D’Ingeo)とニッコロ・アマドーリ(Niccolò Amadori)が、イタリア国内外から訪れたシェフやバーテンダーとともに、一夜限りのペアリングメニューをつくる。

同じ時間に行われるバー エクスペリエンスでは、カクテルバーと、ピザやバーベキューを専門とするシェフが組み、それぞれのペアリングを披露する。

ディナーが進むにつれて、初めはまだ明るかった海が少しずつ暗闇の中へ消えていく。そして23時を過ぎた頃、雰囲気がもう一度変わる。

ドポフェスティバルの時間だ。

それまで席に着いてディナーを楽しんでいた人たちも、今度はカクテルを手にバーの周りへ集まってくる。ゲストとつくり手の距離も、自然と近くなる。普段はそれぞれの店に立つシェフやバーテンダーが、同じカウンターを囲んでいる。

プログラムには決められたスケジュールがあるものの、その切り替わりはほとんど意識させないほど自然に流れていくのがなんとも心地いい。

同じルーフトップから、違う土地へ

6日間を通して、顔ぶれは毎晩変わる。

初日はRuggineによるアペリティーボから始まり、レストラン エクスペリエンスにはMoebius MilanoとLubna Milanoが登場した。その後、RacineとO’ Fiore Mioが、カクテルと焼きたてのピザで一日を締めくくった。

翌晩にはFòLia Bar & Lab、Momento、La Ménagère、Il Locale Firenze、Elementi Fine Diningが参加し、深夜のプログラムは50 Spirito ItalianoとI Vesuvianiが担当した。

3日目になると、視野は国外へ広がった。

ノルウェーのSvanenからDaniel Pappa、コペンハーゲンのGeraniumからBenedetta RomanoとGiulia Caffiero、さらにオスロのHimkok。イタリアと北欧それぞれの料理とバーカルチャーへのアプローチが出会った。

その後もGucci Giardino、Ruby Copenhagen、Piano35、BOB Milano、Atrium Bar、Bar 1930などが登場した。

参加シェフにはEnrico Croatti、Enrico Marmo、Federico Sisti、Satoshi Hazama、Edoardo Tilliらが名を連ねた。ピッツァイオーロでは、Davide Fiorentini、Federico Di Maria、Francesco Di Maria、Marco Manzi、Matteo Lo Iaconoらが参加した。

最終日のドポフェスティバルを担当したのは、Nucleo RomaとVesper Bar。

プログラム全体を眺めていると、一つの土地から次の土地へ移動していく旅のようにも見えてくる。ロマーニャからイタリア各地へ、そして国外へ。なかでも北欧へと広がっていく。

ルーフトップから一歩も出ていないが、新しい皿やカクテルが運ばれてくるたびに、まるで別のバーやレストラン、別の街を訪れているように感じられた。

2026年には、トークプログラムも新たに導入され、料理とドリンクのペアリング、これからの飲酒文化、ピザとカクテルの関係などについて、登壇者と参加者が意見を交わした。

飲んだり食べたりすることだけではなく、業界の異なる分野で働く人たちが、自分たちの仕事について話せる場があるというのも、人々がここに集まる理由だ。

HAZAMA and ALTO

フェスティバルを支えるホスト

ALTOで6日間過ごしていると、何度も目にする人物がいる。

フェスティバルの創設者兼ディレクターであり、ALTO ルーフトップのバーマネージャー兼クリエイティブディレクターを務めるニッコロ・アマドーリだ。

スタッフと話していたかと思えば、次の瞬間には到着したばかりのゲストを迎え、シェフやバーテンダー、スポンサーに状況を確認している。

会場の誰よりも忙しいはずなのに、慌ただしく見えることはない。自分から注目を集めようとはしないが、必要なときには必ずそこにいる。

フェスティバルの中を動き回る彼を見ていると、バーマネージャーというより、経験を積んだホテルの総支配人のように見える。イベントを華やかに演出すること以上に、そこにいる全員が心地よく過ごせることを大切にしているようだ。

こうした仕事の仕方には、アマドーリ家が長年大切にしてきたホスピタリティが表れている。

その原点の一つが、父 クラウディオ・アマドーリ(Claudio Amadori)が1995年、フォルリ=チェゼーナ県モンティアーノにある家族の別荘の地下で始めたレストラン「Le Giare」だ。

そこで長年大切にされてきたのは、料理を提供することだけではない。土地とのつながりや、人をどう迎え、どんな時間を過ごしてもらうかを考えることだった。

その25年後となる2020年、ヴィラ・デル・マーレ・スパ・リゾートのパノラマテラスにALTO ルーフトップがオープンした。

フェスティバルにも、Le Giareから続く考え方が表れている。実際、これだけ著名な店や料理人が集まっているにもかかわらず、誰か一人だけが主役になるような空気がない。シェフ、バーテンダー、ピッツァイオーロが、一緒にその夜をつくる。仕事を終えれば、同じカウンターを囲んで話している。

Niccolò Amadori
Claudio Amadori

ニッコロの考えをキッチンへつなぐ人

ALTO カクテル フェスティバルを支えるもう一人の重要な人物が、2026年からALTOの料理部門を率いているレオナルド・ディンジョーだ。

ニッコロがフェスティバル全体をまとめるホストなら、レオナルドはキッチンでその相手役を務め、ニッコロの考えを料理へと変えていく相棒のような存在である。

プーリア出身のレオナルドは、幼い頃から家族を通じて乳製品や食材に親しんできた。Le Giareで経験を積んだ後、パリの二つ星レストランL’Atelier de Joël Robuchon Saint-Germainへ。その後ミラノのCà-ri-coでは4年間、料理とスピリッツを結びつける仕事に取り組み、故郷プーリアのMasseria Francescaniを経てALTOに加わった。

彼の料理で印象的なのは、見た目の驚きだけを追求していないことだ。それよりも、それぞれの食材が持つ個性を、はっきりと残そうとしている。

発酵、酢づくり、保存、コントロールした酸化といった技法を用いる。なかでも酸味は、単なるアクセントではなく、皿全体に動きとバランスを生み出す要素として使われている。

レオナルドは料理を通して、レストランとバーを近づけようとするALTOの長年の考えを、目に見える形にしている。

現在のALTOは、それぞれ異なる世代と役割を持つ三人の仕事から育ってきた。30年以上にわたるクラウディオのレストラン経験、ニッコロの現代的な視点、そしてレオナルドの料理である。

Niccolò Amadori / Leonardo D’Ingeo

また戻りたくなる場所

イタリアには、美しい景色があり、歴史があり、ワインと料理がある。

それでも、この6日間を振り返ったとき、最も強く心に残っているのは人だった。

バーテンダーはシェフの仕事を称え、シェフは食材を生産した人たちについて語る。主催者はゲストに注目が集まるようにし、地元からの参加者は遠くから訪れた人たちを自然に迎え入れる。

誰か一人がすべての中心になるのではなく、そこにいる全員が周囲の人たちに気を配り敬意を持って接している。その姿を見ているうちに、ホスピタリティとは、相手が心地よく過ごせる場所をつくることなのだと思うようになった。

ALTO カクテル フェスティバルは6日間で終わる。しかし、そこで生まれた興味は、その後も続いていく。

飲んだカクテルをつくったバーへ行きたくなる。

料理を味わったシェフのレストランを予約したくなる。

出会ったバーテンダーが働く街を訪ね、もう一度その人のカウンターで飲みたくなる。

都市間を移動せずにイタリアのバーを巡るつもりでチェルヴィアへ来たが、フェスティバルを終える頃には、次に訪ねたい場所がいくつも増えていた。

Edoardo Nono / Alessandro D’Alessio
Edoardo Sandri - Atrium Bar
Davide Diaferia - Nucleo
Niccolò Amadori

ALTO カクテル フェスティバル 2026 — ゲスト一覧

2026年のALTO カクテル フェスティバルには、イタリア各地をはじめ、コペンハーゲンやオスロ、ロンドンなど国内外からバー、レストラン、シェフ、ピッツァイオーロが集結した。6日間の主なゲストラインナップは以下の通り。

DAY 1|May 24

Ruggine — Bologna, Italy
Fabio Tammariello / Davide “Davo” Patta

Moebius — Milan, Italy
Enrico Croatti / Luca Sinisi

Lubna — Milan, Italy
Marco Masiero

Racine — Milan, Italy
Francesco Ismenghi

O’ Fiore Mio — Faenza, Italy
Davide Fiorentini

AGUARDIENTE — Marina di Ravenna, Italy
Jimmy Bertazzoli

Ristorante Fuba — Rimini, Italy
Enrico Fusi e Angelo Barletta

DAY 2|May 25

FòLia — Lecce, Italy
Federico D’Agati

Momento — Monforte d’Alba, Italy
Enrico Marmo / Jacopo Rosti

La Ménagère — Florence, Italy
Denis Paonessa

Locale Firenze — Florence, Italy
Alessandro Mengoni

Elementi Fine Dining — Brufa, Italy
Andrea Impero

Cinquanta Spirito Italiano — Pagani, Italy
Natale Palmieri

I Vesuviani — Pomigliano d’Arco, Italy
Federico Di Maria / Francesco Di Maria

DAY 3|May 26

Geranium — Copenhagen, Denmark
Benedetta Romano / Giulia Caffiero

Frangente — Milan, Italy
Federico Sisti

Himkok — Oslo, Norway
Federico Biserni / Alessandro Marin

Svanen — Oslo, Norway
Daniel Pappa

Dry Milano — Milan, Italy
Edris Al Malat / Lorenzo Sirabella

DAY 4|May 27

Sali — Milan, Italy
Alessia Bellafonte

Gucci Giardino 25 — Florence, Italy
Martina Bonci / Giovanni Garofano

HAZAMA —Milan,  Italy
Satoshi Hazama 

Ruby — Copenhagen, Denmark
Christian Borrelli 

Il Nido — San Mauro Pascoli, Italy
Eros Castrogiovanni

Sentaku — Bologna, Italy
Nicolò Ribuffo / Andrea Guarnieri

Pizzeria Giotto — Florence, Italy
Marco Manzi

DAY 5|May 28

Barrier — Bergamo, Italy
Nicolò Rossi

Dialogue Lounge — Brescia, Italy
Adrian Cristian

Piano35 — Turin, Italy
Simone Sacco / Fabio Moruzzi / Christian Balzo

BOB — Milan, Italy
Cesar Araujo

Podere Belvedere — Pontassieve, Italy
Edoardo Tilli

Cascina dei Sapori — Rezzato, Italy
Antonio Pappalardo

Rita’s Tiki Room — Milan, Italy
Edoardo Nono / Alessandro D’Alessio

Sogni — Milan, Italy
Matteo Pauiello

DAY 6|May 29

Club Derrière — Rome, Italy
Gabriele Roberto

Atrium Bar, Four Seasons Hotel Firenze — Florence, Italy
Edoardo Sandri

1930 — Milan, Italy
Benjamin Cavagna

Ex Gattabuia —Tolentino, Italy
Andrea Giuseppucci

Crunch — Rome, Italy
Matteo Lo Iacono

Nucleo — Rome, Italy
Davide Diaferia

Vesper Bar — London, UK
Lucia Montanelli

ALTO Rooftop
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