白トリュフの価値を支える森と時間と人

ウンブリア州チッタ・ディ・カステッロ、食のプロが訪れる秋の見本市
September 12, 2026
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Megumi Ueda

白トリュフの産地と聞けば、ピエモンテ州のアルバを思い浮かべる人が多いだろう。しかし、テヴェレ川上流域にも、トリュフと深く結びついた土地がある。

チッタ・ディ・カステッロは、ウンブリア州北部、トスカーナ州との境に近い小さな町だ。この一帯の森では、白と黒、両方のトリュフが採れる。

白トリュフが旬を迎える10月末から11月初めには、毎年「全国高級白トリュフ展」が開かれ、歴史地区には採れたばかりのトリュフが並ぶ。大きさも形もさまざまなその香りを確かめながら、じっくりと品定めをする人々の姿が見られる。

会場内には期間限定のトリュフレストランが設けられ、町のレストランでも季節ならではのメニューを味わえる。展示やショークッキング、地元の料理学校によるアペリティーヴォなど、多彩な催しが盛りだくさんだ。

ここを訪れるのは、一般の来場者だけでなく、仕入れや情報収集を目的に訪れる料理人といった食のプロも少なくない。

官能評価のセッション

プロに学ぶ白トリュフの選び方

なかでも興味深いのが、トリュフの鮮度と品質を自分の感覚で見極める官能評価のセッションだ。産地や価格を知るだけでなく、土から掘り出された実物を見比べ、触れ、香りを嗅ぎながら、何を基準に選ぶべきかを学ぶ。複数のトリュフを同じ場所で比較できる、産地の見本市ならではの機会だった。

案内役は、「The Lord of Truffle」の名で活動するトリュフ・ソムリエ、ダニエレ・ヴィオローニ氏と、食文化を伝える団体Narratori del Gusto副代表のモニカ・パンツェリ氏。

白トリュフの価値は、大きさや重さだけで決まるものではない。香りは十分に立っているか、全体に硬さがあるか。形は整っているか、表面に傷や汚れはないか。いくつもの点を確かめながら、総合的に判断していくのだという。

テーブルの上には、ガラスの容器に入った白トリュフと手袋、評価項目が書かれたシートが並んでいた。評価は、見る、嗅ぐ、触るの三段階。私たちも手袋をつけ、まずは一つずつ観察するところから始めた。

目の前にあるのは、淡い黄褐色をした、土の塊のようなもの。知識がなければ、大きいか小さいかくらいしか分からない。だが、教えられた項目に沿って見ていくと、同じように見えたトリュフにも、それぞれ違いがあることに気づく。表面に土が残っているもの、欠けや傷があるもの、丸みを帯びたものもあれば、いくつもの凹凸ができているものもある。小さなくぼみは、カタツムリがかじった跡のこともあるという。地中でどのように育ってきたのか、推理していくようで面白い。

観察を終えると、今度は香りを確かめる。

説明を聞きながら、トリュフを鼻から2センチほど離し、3秒間ゆっくりと嗅ぐ。花、干し草、キノコ、スパイス、土、発酵香、アンモニアのような刺激。

意識する香りを一つずつ変えながら何度か嗅いでみると、奥から別の匂いが現れてくるようだ。干し草なのか、湿った土なのか、それとも別のものなのか。すぐには言葉にできないが、記憶の中から探していく。

ひと通り見方と嗅ぎ方を教わったところで、テーブルに新たに二つの白トリュフが置かれた。今度は、教わった方法を使って実際に状態を見極める。

「皆さん、どちらが新鮮なトリュフだと思いますか」

ガラスの覆いをしたまま見比べてみる。どちらも形や色に大きな違いはなく、見た目だけでは判断できなかった。

続いて覆いを外し、交互に鼻を近づける。一方にはわずかにキャベツを思わせる匂いがあり、もう一方からは土や森の下草に近い香りがした。先ほど教わった言葉を思い出しながら何度か嗅ぎ比べると、最初には分からなかった違いが少しずつ感じ取れるようになった。

次は、手に取って硬さを確かめる。一カ所だけで判断せず、指を少しずつ動かしながら、何カ所かをやさしく押していく。新鮮なトリュフは全体に締まりがあり、指の圧を押し返すような感触がある。部分的に柔らかくなったものは、業界で「tartufo stanco(疲れたトリュフ)」と呼ばれるそうだ。

トリュフが「疲れる」のは、採取から時間が経っただけでなく、輸送中に低温管理が途切れ温度の上昇と低下を繰り返すことだったり、冷蔵中に包み紙を交換しなかったりすることでも起こる。

とはいえ、すぐに捨てる必要があるわけではない。内部には香りが残っており、使い方によっては料理に生かせる。ただし、品質が落ちた分、市場での価値は下がり、採れたばかりの最良の状態と同じ価格では取引されない。

だからこそ、仕入れる際には、産地や外見だけで判断せず、いつ入荷したのか、どのように保存されていたのかを尋ねたい。可能であれば実際に手に取り、何カ所かの硬さを確かめ、香りを嗅いでみる。白トリュフのように、鮮度が香りと価格に直結する食材では、こうした確認が仕入れの判断を大きく左右する。

セッションの締めくくりには、バターの乗ったクロスティーニが用意された。一人ずつ、目の前で白トリュフを削ってもらう。薄い切片がはらはらと重なるにつれ、削りたてならではの鮮明で生き生きとした香りが立ち上がる。

口にすると、土や森を思わせる複雑な香りをバターのまろやかさが受け止め、驚くほどよく合う。その後も手の込んだ料理をいくつも味わったが、今も強く印象に残っているのは、このシンプルな食べ方だ。

Monica Panzeri / Daniele Violoni

土の中から形を崩さず取り出すまで

この年、会場では750グラムを超える巨大な白トリュフが紹介された。これほどの大きさは珍しい。しかし、その価値を決めるのは、単純な重量だけではない。

白トリュフは土の中に埋まっているため、場所はもちろん、どのような形で育っているのかも地表からは分からない。ハンターは訓練された犬とともに森を歩き、犬が匂いを捉えると、すぐにその場所へ寄って慎重に土を掘る。そのまま犬に任せれば、傷つけたり、先に食べてしまったりすることもあるからだ。

巨大な一塊を無傷のまま取り出すには、森の中で十分に育つだけでなく、犬がその存在を見つけ、ハンターが位置と形を見極めながら掘り出さなければならない。

では、実際にどのように探すのだろう。翌朝、その様子を見せてもらうため、ハンターと犬たちと一緒に森へ向かった。

Andrea Canuti

犬なくしてトリュフ探しはできない

案内してくれたのは、Associazione Tartufai Altotevere会長のアンドレア・カヌーティ氏と、菌類学者のパオロ・ファッブリチャーニ氏。四輪駆動車でぬかるんだ道を進み、途中からは小川を渡りながら、湿った森の中を歩いた。

同行したのは、何人ものハンターと、何頭もの犬たち。森に入ると、犬たちは広い範囲を走り回り、鼻を地面に近づけながら木々の間を行き来する。探しているのか、ただ夢中で走っているのか見分けられない。

一頭が勢いよく土を掘り始めると、ハンターは走ってそこに近づく。掘ったからといって、必ずトリュフがあるわけではない。犬は何度も別の場所へ走っていき、また土を掘る。ハンターたちはその反応を見ながら進む。こうした何も見つからない時間がずっと続く。

犬は特別な訓練を重ね、やっとトリュフの場所を探せるようになる。それでも、さまざまな植物が生い茂る森の中で、地中にある微かな匂いを嗅ぎ分けるのは簡単ではない。すぐに正確な場所を突き止められるわけではなく、あちこちを掘りながら探っているようだった。

ハンターはその動きを注意深く観察し、ありそうな場所を見極める。犬がさらに掘り進める前に手を入れ、傷つけないよう周囲の土を少しずつ取り除いていく。

広い森の中を何時間も歩き回る。犬たちが土を掘り始めるたびに、ハンターが駆け寄り、その様子を確かめる。それを何度も繰り返した。

そうしていると、一頭が土を掘り始めた。ハンターはすぐに駆け寄り、犬を制して地面に手を入れる。周囲の土を慎重に取り除いていくと、そこから小さな塊が姿を現した。何時間も森を歩き回った末にようやく見つかった一つだった。

どこで見つかったかは、ハンターにとって大切な秘密だ。どの木の近くで育ちやすいのか。雨や日差し、季節の変化によって、探す場所をどう変えるのか。犬の育て方とともに受け継がれてきたのは、長年の経験によって培われた、森を読むための知識である。

白トリュフの価格はどう決まるのか

森で掘り出された白トリュフを、最良の状態で楽しめる時間は限られている。同じ種類で、大きさも同じように見えても、いつ採取され、どのように運ばれ保存されてきたかによって香りや状態には差が生まれる。

価格を決めるのは、希少性だけではない。その年の雨や気温、収穫量に加え、一つひとつの大きさや形、傷の有無、香り、硬さ、そして採取されてからの時間も価値を左右する。自然の中で育つ以上、毎年同じ条件が揃うことはなく、品質も相場も一定ではない。

2025年の会場では、15グラムを超えるものは、1キログラム当たり約5,000ユーロが一つの目安とされていた。さらに、120〜200グラムほどの大型になると、1キログラム当たり6,000〜7,000ユーロに達することもあるという。

これは2025年の収穫状況をもとに会場で示されていた相場である。翌年も同じ価格になるとは限らない。

実力派シェフが魅せるトリュフのショークッキング

「高級白トリュフ」の名を掲げる見本市だが、シェフによるショークッキングでは、黒トリュフが使われた。チッタ・ディ・カステッロでは白と黒、両方のトリュフが採れるのだ。

黒トリュフは薄く削るだけでなく、加熱したり、生地に練り込んだりすることもできる。米料理からスープ、デザートまで、3人のシェフがそれぞれ異なる使い方を見せてくれた。

ダニエレ・アウリッキオ氏が作ったのは、森をイメージしたベジタリアンのパエリアだった。ピオッピーニは甘酸っぱく仕上げ、クレミニやカルドンチェッリはフライパンで焼き、シャンピニョンは生のまま。数種類のキノコを、それぞれに合った方法で調理していく。

米には、液体をよく吸い、炊いても形を保ちやすいスペインのボンバ米を使う。リゾットのように混ぜながら仕上げるのではなく、具材を焼いた同じ鍋に米と水分を加え、混ぜずに炊いていく。鍋に残ったキノコの旨味を米に吸わせながら、一粒ずつがほどける状態に仕上げ、最後に黒トリュフを薄く削った。

アウリッキオ氏が繰り返していたのは、質のよい繊細な食材ほど、手を加えすぎない方がいいということだった。トリュフの香りを目立たせるために、ほかの食材を消してしまうのではない。異なるキノコの食感や香りを重ね、皿全体で森を思わせるというもの。

森をイメージしたパエリア

続いて、アッシジのLocanda del Cardinaleを率いるニコラ・カッシーニ氏が披露したのは、フランスのスープ・ア・ロニョンをもとにした一皿だ。

地元産の黄タマネギをブイヨンで低温調理し、中をくり抜いてオニオンスープを詰める。その上にグリュイエールをのせ、ニンニクとハーブを香らせたパンを添える。皿の底に敷かれていたのは、焼いたタマネギを一日かけて煮出し、とろりとするまで煮詰めたソース。最後に黒トリュフを薄く削って仕上げた。

トリュフを引き立たせるために、カッシーニ氏が選んだのは肉ではなくタマネギだった。丸ごと火を入れたもの、スープ、濃縮したソース。同じタマネギを三つの形で使い、甘味に奥行きを持たせながらも、食材の数は増やしすぎない。穏やかな味わいのタマネギは、黒だけでなく白トリュフも引き立てられるという。

Nicola Cassini

3皿目は、Evo Bistrotのエリア・ルンギ氏によるデザート。ドイツ人の母を持つ自身の背景から、黒い森のケーキ、シュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテを選んだ。

カカオのスポンジ、サワーチェリー、生クリーム、チェリーの蒸留酒という組み合わせに、黒トリュフを加える。トリュフは仕上げに削るだけではなく、スポンジ生地にもすり込み、さらにケーキの層の間にも重ねられた。

シロップ漬けのチェリーにしっかりとした甘さがあるため、カカオには苦味の強いものを選び、生クリームに加える砂糖は控えめにする。黒トリュフとカカオが合わさると、通常のデザートにはない「鉄を思わせる」ニュアンスが生まれるという。

ルンギ氏は、トリュフだけを強く主張させず、ほかの材料に寄り添うバランスに仕上げた。

Elia Lunghi

会期中には、ウンブリアをはじめイタリア各地で活躍するシェフたちが登場し、ショークッキングが次々と行われる。トリュフをいつ加えるのか、どれほど使うのか、なぜその食材と合わせるのか。完成した皿からは見えにくい細かな判断を、シェフ本人の解説と手元を追いながら知ることができる。出来上がった料理が、その場で観客に振る舞われることもあった。一つの食材が、シェフによってまったく異なる料理へ変わっていく過程を続けて見られるというのはかなり魅力的だ。

Paolo Fabbriciani

白トリュフの季節この町に戻りたくなる

チッタ・ディ・カステッロで過ごした数日間は、朝からさまざまな催しがあり、充実していた。それでいて、急かされるような慌ただしさはなく、町をゆっくりと歩いた時間が心地よかった。

おそらくそれは、観光客のためだけに作られたイベントではなく、地域の人たちが毎年この季節に迎える、大切な行事だからなのだと思う。

町を歩き、その周りにある料理や加工品に触れ、採取する人、料理する人、ここで暮らす人たちの話を聞く。そうして過ごすうちに、この町ではトリュフが一部の高級レストランだけのものではなく、人々の仕事や季節の中にあるのだと感じた。

そして、外から訪れた私たちを、その行事の中に自然に迎え入れてくれるような人々の温かさが一番印象に残っている。

今年も、白トリュフの季節がやってくる。この街へ訪れることが秋の定番になりそうだ。

Salone Nazionale del Tartufo Bianco Pregiato
Salone Nazionale del Tartufo Bianco Pregiato

https://biancopregiato.it/

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