Otivmという贅沢

ローマの街を眺め歴史に想いを馳せる
December 30, 2025
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Otivm Roof Bar は、ローマで最も神聖な七つの丘のひとつ、カンピドリオ(カピトリーノの丘) のすぐそばにあります。

テラスに一歩足を踏み出した瞬間、目の前に広がるのは、これぞローマという景色。

まず視界に飛び込んでくるのが、ヴェネツィア広場にそびえ立つ、真っ白で巨大な建物。
イタリア統一の象徴でもあるヴィットリオ・エマヌエーレ2世記念堂です。

大理石でできたその姿は、昼はまぶしく、夕暮れにはやわらかく輝き、ローマのスケールの大きさを実感させてくれます。視線を少し動かすと、長い歴史をもつ サンタ・マリア・イン・アラコエリ教会 が、さらに遠くには、ローマ大シナゴーグの四角くて印象的なドーム屋根が顔をのぞかせます。

キリスト教とユダヤ教、異なる文化が同じ景色の中に自然に溶け込んでいるのも、ローマらしいところです。

ここに立っていると、2000年以上にわたるローマの歴史、宗教、文化が一枚のパノラマ写真のように目の前に広がるようです。グラスを片手に、この景色を眺める時間は、観光というよりも、ローマという街の中に身を置いている感覚に近いかもしれません。

古代ローマ流に自分のための静かな時間を過ごす

ホテルの名前にもなっている Otivm(オティウム)。これはラテン語で、「自分のための静かな時間」を意味する言葉です。ただ休むというよりも、心に余裕を取り戻し、自分自身を豊かにしていく時間で芸術や哲学、学び、そして自然にゆっくりと向き合うような質の高いひとときを表しています。

オティウムとは、かつての古代ローマの貴族や知識人にとって、都市の喧騒や政治の世界から一歩離れ、
読書や執筆、哲学や芸術を楽しみ、家族や友人と語り合うための大切な時間でした。

ローマ共和政時代の政治家キケロは、オティウムを「国家の平和を前提とした、個人の精神的な余裕」と表現し、公務から離れて学問や思索に没頭する、気高い時間だと記しています。

また、ローマ帝国初期の哲学者セネカは、「人は時間を浪費しがちだが、 自分のための静かな時間を持つことで、人生は本当に豊かなものになる」 と語りました。

そんな思想を体現するように、Otivmホテルは古代の建物を丁寧に改装し、モダンなデザインと古代ローマへのオマージュを美しく融合させています。なかでも必見なのが、3階に今も残る歴史的な大理石のアーチ。ローマの時間の重なりを静かに、そして確かに感じられる空間です。


色と感情で選ぶ、Otivmのシグネチャーカクテル

Otivm Roof Barのアペリティーボは、ただおいしいお酒を飲むだけではありません。

このバーを監修しているのは、バーマネージャーの マッテオ・ギットーニ氏。彼が考えたカクテルリストのテーマは、ずばり Mood(ムード)。人の感情そのものからインスピレーションを得た、とてもユニークで感覚的なドリンクリストです。

メニューを開くと、名前や材料だけの説明ではなく、ひとつひとつが、色と感情 をテーマにして作られています。たとえば、赤は Rabbia(怒り)、紫は Calma(穏やかさ)といった具合。

見た目の色だけでなく、香りや味の強さ、余韻までもが、その感情を表現するようにデザインされ、フルーツや野菜は果肉だけでなく皮や芯まで使い切るなどサステナビリティにも本気。

このMoodシリーズは、6種類のシグネチャーカクテルに加え、白と黒をテーマにしたノンアルコールドリンクを含む、全8種類。

赤は怒りや強い感情、オレンジは情熱やエネルギー、黄色は変化やクリアな思考、緑は再生やリラクゼーション、青は安定や信頼、紫は落ち着きや冷静さ。そして、白は純粋さ、黒は神秘を表現したノンアルコールです。

赤|怒り

赤のラ・ラビアはパトロン・ブランコのテキーラをイエローペッパーで漬け込み。そこにメスカルのスモーキーさ、青胡椒のスパイス感やアンチョ・レイエス、カプサイシンエキスが加わります。ペッパーの皮までパウダーにして使うなど、素材を余さず使い切る設計も印象的。スパイシーで刺激的な感情を味で表現した一杯です。

オレンジ|変革・情熱

ボンベイ・サファイアのジンをベースに、日本酒とアプリコットのリキュールを合わせた、意外性のある組み合わせ。フルーティーさの中に芯があり、何かが始まりそうなエネルギーを感じさせます。

黄色|明るさ・変化

焙煎コーヒー豆をじっくり漬け込んだエンジェルズ・エンヴィ・バーボンに、スコッチ、コーヒーリキュール、そしてギリシャヨーグルトとコーヒーソーダ。意外にも軽やかで、頭がすっと冴えるような印象です。

緑|リラックス・再生

グリーンペッパーを漬け込んだラム酒サンタテレサ1796に、キウイのコーディアルとソーダ。爽やかで優しく、飲んでいるうちに自然と肩の力が抜けていくような一杯です。

青|信頼・安定

ブルーベリー風味のウォッカにスピルリナ、ザクロ酢のほのかな酸味。仕上げにフランチャコルタを加えた、上品でバランスのいい味わい。静かに会話を楽しみたいときにぴったりです。

紫|平和・冷静

ボンベイ・サファイア・ドライジンに紫キャベツのシュラブを合わせ、 酸味と塩味、ほんの少しのスパイスをプラス。不思議と心が落ち着き、自分の内側に意識が向くような感覚になります。

白|純粋・完璧
ノンアルコールのジンに、ローズとタイムの香りを合わせた、透明感のある一杯。

黒|ミステリー

トンカ豆の甘い香りとチャコールの深みが印象的な、大人のノンアルコールです。

カクテルには、軽いおつまみのフードトリオがセットで付きます。

監修は、シェフのジュリア・ゴイア氏。パンとトマト、ストラッチャテッラとバジルのパンツァネッラやスモークサーモンとリコッタクリーム、ライムを添えたタコス。そして最後は、ライ麦パンにバナナクリームとメープルシロップ、カリカリのチップスを添えた、甘酸っぱいデザート。どれも軽やかで、カクテルの世界観を邪魔せず、そっと引き立ててくれます。

Giulia Goia
MOOD Cocktail Menu

このカクテルの開発者マッテオ・ギットーニ

このMoodカクテルを手がけているのが、バーマネージャーのマッテオ・ギットーニ。

まだ27歳という若さながら、ローマの名店として知られる バッカーノ やThe Race Club で経験を積み、現在は Sinners Club のオーナーも務める、ローマのバーカルチャーを牽引する存在です。

彼の強みは、ただおいしいカクテルを作ることではなく、ミクソロジーを使って物語や感情を形にすること。色、香り、味、そしてコンセプト。それらを丁寧に組み立てながら、飲む人が自然と感情を重ねられるような、複雑でいて、どこか楽しい世界観を生み出しています。

Otivm Roof Barのカクテルが、一杯のお酒を超えた体験に感じられるのは、彼のこうした哲学と感性が、すべてのグラスに注ぎ込まれているからかもしれません。

Matteo Gittoni

極上のカクテルを味わいながら古代ローマ人が大切にしていた「自分のための時間=オティウム」を過ごしてみてはいかがでしょうか。

カンピドリオ:古代ローマ時代から政治と宗教の中心だった場所で、ローマ市政の中心であり、歴史的にも象徴的な丘。

ヴィットリオ・エマヌエーレ2世記念堂:イタリア統一の象徴であ「祖国の祭壇」とも呼ばれる国民的モニュメント。真っ白な大理石の壮大な姿は、ローマの景観の中でもひときわ目を引く存在。

ローマ大シナゴーグ  (Tempio Maggiore di Roma):ユダヤ教の礼拝堂で、ローマに現存する最大のもの。四角い外観と大きなアルミニウムの四角いドームが特徴的

OTIVM
OTIVM

Via d’Aracoeli 11/A, 00186 Rome

https://otiumhotel.eu/

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