Aiki Pub

和食好きにこそ勧めたいとっておきの店
April 25, 2026
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Bar
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MIN

ポルトゥエンセ地区にあるAiki Pubは、和食の軸をしっかり押さえながら、ところどころにひねりが効いています。きっと和食に慣れている人ほどハマってしまう、すでにお気に入りの店がある人でも「これは面白い」と感じるでしょう。

Aiki Pub

軸にあるのは、「居酒屋」です。オーナーのカルロは、日本の居酒屋文化に惹かれ、「いいお酒を肩の力を抜いて楽しめる場所をつくりたい」という思いからAiki Pubを始めました。

そのコンセプトは、店に足を踏み入れた瞬間から自然と伝わってきます。

まず目に入るのが大きなカウンター。ここを中心に、人が自然と集まってくるつくりになっています。ドリンクの種類も幅広くて、日本酒だけでなく、ビールや焼酎、カクテル、コンブチャまで揃っています。

店内はやわらかい光に包まれていて、自然と落ち着ける雰囲気。桜こそないものの、連なる提灯の灯りが、どこかお花見の夜を思わせます。

Aiki Pub

内装のデザインはカルロ自身によるもので、ストリートのカジュアルな空気感と日本のカルチャーが合わさった、落ち着きすぎず、かといって騒がしくもない、ほどよいバランス。そのさじ加減のうまさに、思わずセンスを感じます。そして、その感覚は空間づくりだけでなく、料理やドリンクにも表れています。

酒ソムリエでもあるカルロのセレクトは、いわゆる定番というよりは、少し個性のある日本酒や、昔ながらの製法でつくられたものが中心です。

オリジナルのクラフトビール「Aiki」は、無濾過・非加熱のブランシュで、イタリアで醸造されたものに柚子とベルガモットを合わせて発酵させています。飲み口は軽くて、すっと入ってくる感じでさっぱりとした香りが印象的です。

居酒屋というと、料理とお酒は切り離せないものです。一口食べて、少し飲んで、また次をつまむ。その繰り返しで、料理の味もお酒の風味も、相乗効果で引き立っていきます。

Craft Beer Aiki

Aiki とは

「Aiki」という名前は、日本の武道である合気道に由来しています。
オーナーのカルロ・ココルッロは合気道の師範でもあり、このポルトゥエンセ地区で道場を運営しています。「合」「気」「道」という三つの漢字から成り立つ合気道には、「気と調和する道」といった意味があります。Aiki Pubでは、この調和という概念を、日本酒を共に味わうという体験を通して表現しています。

日本で「酒」といえばアルコール全般を意味することも多いですが、海外では「日本酒」を指します。Aiki では、その中でも特に「生酛(きもと)」と呼ばれる伝統的な製法の日本酒に力を入れています。

Carlo Cocorullo

生酛製法、時間をかけて育てる酒

生酛は、江戸時代から続く日本酒づくりの中でも、最も古い製法のひとつです。特徴は、自然の力に委ねる工程の多さ。乳酸を人工的に加えるのではなく、発酵の流れそのものをゆっくりと見守りながら進めていきます。

どこかナチュラルワインにも通じるこのアプローチは、手間も時間もかかりますが、その分、味わいにはっきりとした個性が現れます。

Carlo Cocorullo

日本酒を引き立てる料理

厨房を率いるのは、イタリア中部で日本料理の経験を積んできたシェフ、ガブリエレ・チェプラーノ氏です。ミシュラン星付きレストラン「レトロセナ」に併設されたラーメン店「オペラ」や「ワラク」などで腕を磨き、現在は「トモラーメンクラブ」プロジェクトにも携わっています。

彼の料理は、派手さで人を圧倒しようとするものではありません。むしろ、日本の食文化の理念を深く理解し、素材本来の持ち味を最大限に引き出すことに重点を置いています。

メニューは、シェアすることを前提とした小皿料理が中心です。最初からいくつか頼んでテーブルで分けながら、日本酒とのペアリングを楽​​しむというスタイルがおすすめです。

Gabriele Seprano

前菜

その時期の食材を使いながら、「日本では定番だけど、海外ではまだあまり見かけない」ものが取り入れられています。(ベジタリアン向けの選択肢もあり。)

まずは、ツナマヨおにぎり。イタリアの感覚からすると少し意外に感じる組み合わせかもしれませんが、日本では安定の人気を誇る具材です。(日本のマヨネーズは独自のポジションがあって、専用ブランドがいくつもあります。)ふっくらととした艶やかなご飯のツナマヨおにぎりは、ちょっと小ぶりで食事の始まりにぴったりです。

Onigiri
Gyoza

料理は全体を通して、イタリアの食材をベースにしながら、日本の考え方をベースに組み立てられています。

たとえば豆腐は、ローマ近郊のOtani BIOから仕入れています。イタリアでよく見かける柔らかいタイプではなく、しっかりした木綿豆腐です。食感はフレッシュチーズのプリモサーレとリコッタチーズの間くらいで、ほどよくコクがあります。

メニューの辛い豆腐では、この木綿豆腐に柚子出汁と和がらしが添えられ、軽い辛みと柑橘の香りが、豆腐の味わいを引き立てます。

Karai Tofu

前菜の中でも特におすすめなのが、ナス田楽です。

日本では、焼いたナスに甘辛い味噌をのせるのが定番のレシピですが、Aiki では一度軽く揚げてからバーナーで表面を炙って仕上げています。カカオニブがカリッとした食感を加え、とろけるようなナスの柔らかさをさりげなく引き立てます。味噌とカカオの組み合わせは驚くほど相性が良く、いくらでもおかわりしてしまいそうです。

土田酒造の力強くコクのある個性的な日本酒 Tsuchida F と合わせると、ナス田楽の旨味をさらに引き出し格別になります。これだけでも、ここに来る意味があると思えるくらい、完成度の高いペアリングです。

Nasu Dengaku
Tsuchida F

メイン料理

ヒタシタ・サカナは、コントラストが絶妙な一品です。刺身の状態で魚が出てきて、温かいお茶ベースの出汁をかけて仕上げます。しゃぶしゃぶを逆から組み立てたような趣で、熱が入りすぎない絶妙なところで、魚の繊細さはそのままに、出汁の旨味がじんわり広がります。

Hitashita Sakana

豚の角煮は、マルケ州の黒豚(レ・ノルチーノ)を使い、出汁・醤油・みりんを用いてじっくりと時間をかけて煮込みます。箸でほぐれるくらい柔らかく、スープにも旨味がしっかり出ています。ほろ苦いイタリアの春野菜アグレッティが添えられ、この軽い苦味が、甘みとコクをいい具合に引き締めてくれます。土田酒造の 菩提元×生酛との相性は抜群で、角煮の濃い味わいに、菩提元×生酛の力強い甘みと旨味が重なり合い、味わいに一層の深みをもたらします。

Buta no Kakuni
Bodaimoto × Kimoto

うどん

Aikiでは、ラーメンはレギュラーメニューではなく、特別な日曜日のラーメンバーイベントでのみ提供されます。一方、うどんが定番です。

ベジタリアンメニューでもあるカレーうどんは、野菜をベースにスパイスがしっかり効いていて、食べ応えがあります。

一方、肉の入ったうどんは、マルケ産の豚肉に黒にんにく、レモンの皮、軽く辛みのあるラグーを合わせたもの。スパイスと柑橘の組み合わせがトムヤムクンを思わせるようなニュアンスもあって、そこに黒にんにくのコクが重なります。どこか中華や四川料理の影響も感じられ、和風の枠に留まらない仕上がりです。

麺は日本から直輸入しており、しっかりとした食感と滑らかな口当たりが特徴です。良い食材を選ぶことは、使いこなすことと同じくらい重要であり、何よりも大切なのは、それらが丁寧に調理されている点です。

Kare Udon
Udon

デザート

デザートは、大福やどら焼きといった日本の定番スイーツが中心です。

抹茶ブラウニーは濃厚でバランスが良く、抹茶の苦みがチョコレートの甘さを引き立てています。贅沢な味わいでありながら、重たい感じは全くありません。

白抹茶は、なめらかなホワイトチョコレートに抹茶ときな粉のクランブルを組み合わせ、まろやかで優しい甘さに仕上がっています。日本らしい味わいですが、Aikiオリジナルのレシピなので、ここでしか味わえません。これは特におすすめです。

斬新さを追求するのではなく、流れの中で自然に組み立てられた料理たち。さりげないアイデアが随所にあって、そのどれもが味としてきちんとまとまっています。
和食に慣れている人ほど、「こういうアプローチもあるんだ」と感じる場面が多いはずです。

気づけば、また来たくなる。誰かを連れてきたくなる。Aikiは、そんなお店です。

Dassai
Negroshu

Aiki Pub
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